すでに終盤を迎えていますが、さる10月27日から今週11月9日までの2週間は『読書週間』でした。11月3日の祝日「文化の日」をはさむ前後2週間と決まっているので、毎年日程が変わることはありません。今年で第77回目という長い歴史をもつキャンペーンです。
一方、昨年からは新たに『秋の読書推進月間』という取り組みも始まりました。こちらもやはり10月27日にスタートし、11月23日までと少し長く続きます。いずれも「読書の秋」を象徴するキャンペーンですが、そもそもなぜ「読書の秋」なのでしょうか。
今から約1200年前の中国(唐の時代)に、学者で詩人の韓愈(かんゆ)という人がいました。その韓愈の残した文の中に【燈火親しむべし】という一節があります。
「秋になると涼しく、また、夜も長くなるため、燈火(とうか=灯り)の下で読書をするのに適している」といった意味ですが、「読書の秋」はこの一節から生まれたと言われています。
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さて、その読書の効能については、今さら私が言うまでもないでしょう。「幅広い知識の習得」「豊かな人間性の涵養」「読解力の向上」「ストレス解消」…。
それ以外にも、皆さんそれぞれに読書の効能や目的があると思います。それはそれとして、私が個人的に読書の1番の効能だと思っているのは「人との出会い」です。
「人生100年時代」と言われますが、自分が一生のうちに出会える「人」は、いったい何人いるでしょうか? しかも、「自分の生き方・考え方に影響を与えた人」となると、そうたくさんいるものではないと思います。しかし、私は小中学生にして、そんな人100人と出会うことができました。それは、伝記や歴史小説を読んだからです。
そう聞くと「えっ? だとしたら、100人の人ではなく100冊の本なのでは?」と思ったかもしれません。確かに、そのとおりです。
ただし、伝記や歴史小説は、ある人物の生涯を綴った読み物です。多少の誇張や作者の歴史観が反映されることもありますが、史実に基づきながらその人の生き方や考え方が描かれています。
小学生時代の私は、学校の図書室にあった約60人の伝記シリーズを全巻借りて読みました。今思い返しても、その理由は分かりません。ただ、中学生になってさらに読んだ市井の人(世間一般の人)の人物伝や、実在の人物を描いた歴史小説を合わせると、出会った人の数は約100人に及ぶのです。
聖徳太子、リンカン(上の画像)、徳川家康、エジソン、坂本龍馬…。古今東西を問わず、また、歴史に名を残しているか否かに関わらず、書物に描かれた人物が何を考え、どう生きたのかを10代前半に知ることができたのは、その後の私の財産になりました。
なぜなら、人生の様々な局面や節目で、書物を通して出会った100人誰かしらの顔を思い浮かべ、例えば「こんなとき坂本龍馬なら、どう判断し行動するだろうか」などと考える拠り所になったからです。
少し大げさですが、小中学生時代の私が「自分の生き方・考え方に影響を与えた100人と出会った」というのは、そういう意味です。書物を介して出会った100人がいつも私の後ろにいて、本来は優柔不断で思慮の浅い私の大きな支えになってくれているのです。
伝記や歴史小説に限らず、さらにはフィクション・ノンフィクション等のジャンルに関係なく、多くの書物に多くの人の生き方・考え方が描かれています。もしかしたらその人は、皆さんに生きるヒント・考えるヒントを与えてくれる人、さらには思考し判断する力を貸してくれる人かもしれません。
せっかくの「読書の秋」です。どうか、良き出会いを。