今から30年前に行われた第3回ラグビーW杯に出場した日本代表チームは、ニュージーランドと対戦して145対17という歴史的大敗を喫します。そのときの選手の1人に、平尾誠二さんという方がいました。以前も紹介したことがあるので、9年生の中には覚えている人がいるかもしれません。
後に代表チームの監督も務め、今やっと世界の強豪国と肩を並べられるようになった日本ラグビーの礎を築き、「ミスター・ラグビー」と呼ばれた方です。残念ながら9年前に53歳という若さで亡くなった平尾さんは、生前こんな言葉を残されています。
【時間って、命の一部なんですよ】
「 Time is money(時は金なり)」という英語の諺があります。では、あえて平尾さんの言葉を諺風に「 Time is life(時は命なり)」と表現して両者を対比してみましょう。「時は金か? 命か?」皆さんは、どちらだと思いますか。
ちなみに英語つながりでもう1つ教えると、日本語の「暇つぶし」は英語で「killing time」というのだそうです。直訳すれば「時間殺し」。お金は一度失っても取り戻すチャンスがありますが、命は二度と取り戻せません。自分の限りある時間を命にたとえるという発想は、平尾さんの考え方と共通しているかもしれません。
まさに「時間」は「命」と同じで、かけがえのないものです。「かけがえのない」とは、「他の何ものにも代えられない」という意味です。したがって、時間を守らないことで失うものもまた、取り返しのつかないものであることが多くなります。
例えば、組織の一員としての自分が時間を守らないと、組織全体の活動を停滞させたり、他の組織員の余計な仕事を増やしたりすることにつながります。つまり、他者のかけがえのない時間を奪ってしまうことになるのです。そして、そのことで、自分もまた大事なものを失うことになります。
それは、自分に対する信用や信頼です。特に社会人として時間を守らずに信用・信頼を失えば、最終的に自分の社会的地位や身分まで失うことになるでしょう。
さらにもう一つ、時間を大事にしないことで失うものがあります。実は、先ほどの平尾さんの言葉には、こんな続きがあるのです。
【時間って、命の一部なんですよ。今の時間を大事にできない人は、未来の時間も大事にできない】
よく「限りある資源を大事に」という言葉を耳にします。その「資源」の意味を「何かを創り出す基になるもの」と解釈するなら、私たちが持つ最大の資源は「時間」であると言えるかもしれません。もし、そうだとしたら、「今、この時」という限りある資源を無駄にし続ければ、自分の願う未来も創り出せなくなるでしょう。
「自分の信用・信頼」と「自分の願う未来」。そのどちらも失わないために、どうかかけがえのない時間を大事に、限りある時間を大事に、「今、この時」を大事に生きてください。