では、今年度最後のKMT(校長ミーニング・タイム)です。
「前例踏襲」と「慣例慣行」という四字熟語があります。「前例踏襲」は「前々からやっていることに倣って、そのまま受け継ぐこと」という意味です。「慣例慣行」も少し似ていますが、こちらには「ずっと続けてきていて、きまりのようになっていること」といった意味があります。
学校も含め現代社会の多くの組織に、実は非合理的であるにもかかわらず、それを変えようとせず続けている前例があります。実は時代に合わなくなっているにもかかわらず、脈々と受け継いでいる慣例もたくさんあります。
そして、多くの場合それらに共通している「変えない理由」は、「今までがそうだったから」、さらに本音を言うと「現状維持でも、特に問題ないから」「居心地が良いことを、わざわざ変えたくないから」といったところです。前例踏襲主義や慣例慣行主義の弊害の、最たるものでしょう。
8年生は覚えているかもしれませんが、例年、修了式で紹介している言葉があります。NHKサイエンス番組のタイトルにもなっているイギリスの生物学者・ダーウィンという人の言葉です。9年生理科の教科書『生物の多様性と進化』という単元に出てくるダーウィンは、次の言葉を残しています。
【最も強い者や、最も賢い者が生き残るのではない。 唯一生き残るのは、変化できる者だけである。】
地球の歴史上最強の生物である恐竜は、気候の変動に適応できずに滅びました。霊長(最も優れた生物)を自負する人類も、今までの価値観を改め、自ら招いた環境悪化への対応を変えなければ、恐竜と同じ運命をたどるでしょう。
同じことが、生物の種だけでなく、さまざまな組織やその構成員である私たち一人ひとりにも言えます。さすがに恐竜のように絶滅はしませんが、組織も私たちも前例にとらわれて変化できるチャンスを逸すると、自らを向上させるチャンスも失うのです。
では、人が変わるきっかけには、何があるでしょう? それは、人や書物との出会いかもしれません。あるいは、一つの成功体験や、逆に失敗体験かもしれません。進級や進学、就職や転勤など、自分の置かれる環境が変わることも、自分を変えるきっかけになり得ます。そう考えると私たちは今、変化のチャンスを迎えているのです。
そのチャンスを前に、過去の自分を「前例・慣例」にし、現状に甘んじていてはいけません。この1年間を省みて、学習習慣・生活習慣の両面で自分に足りなかった点を挙げてみてください。そして、それを改めるため、変化への1歩踏み出しましょう。
時は、まさに春。躍動感にあふれ、環境も変わる今こそ「前例踏襲・慣例慣行」を脱し、自分をアップデートしてください。
【最も強い者や、最も賢い者が生き残るのではない。 唯一生き残るのは、変化できる者だけである。】