さて、新入生の皆さん。改めて入学おめでとうございます。
皆さんが入学したこの板橋第三中学校には、学校の特色とも言える数字の【1】が、5つあります。
まず最初の【1】は、これ、皆さんもよく知っている「学びのエリア」のマスコットキャラクター「いっきゅうさん」の【1】です。小中一貫教育を推進する板橋区では、皆さんは中学1年生であると同時にエリア7年生でもあります。
本校と板一小・板八小・中根橋小からなる「小中一貫・板三エリア」では、全ての教室にこの「いっきゅうさん」の教室表示があったはずです。名前の由来は「小中一貫」の「一」、「九年間で育てる板三エリアの子どもたち」から「九」と「三」をとって「いっきゅうさん(一九三)」です。「いっきゅうさん」の頭に生えている双葉は、本校の校歌の歌詞に出てくるユウカリの葉です。
学年が上がるにつれて大きくなるこのユウカリの葉は、皆さんの成長を意味しています。ぜひ、3年間かけて、この絵の大きな双葉のように、たくましく成長していってください。
次の【1】は、本校の先生や生徒はもちろん、保護者・地域の皆さんで共有している夢と関連があります。その夢とは「板橋第三中学校を、東京で1番の学校にする」という夢です。ただし、「東京で1番」といっても、他の学校と何かを比較して「1番」とか、大会やコンクールなどで「1番」といった意味ではありません。
簡単に言うと「東京で1番の学校は、どこですか?」と尋ねられたとき、そこに通う全ての生徒が、そこで働く全ての教職員が、そこに我が子を通わせる全ての保護者・地域の皆様が、胸を張って「板橋第三中学校です」と即答できる学校という意味です。したがって、言い方を変えれば「東京で1番の学校」とは、満足度の極めて高い学校、自己肯定感の極めて高い学校ということになるでしょう。
今日から皆さんは、「東京で1番の学校」という夢を共有する仲間です。ぜひ力を合わせて、夢を実現させましょう。
3つめの【1】は、校則です。本校に校則は、たった1つしかありません。それは『 Be Gentleman(ビィ・ジェントルマン=紳士であれ)』という校則です。これは、アメリカの教育者クラーク博士の言葉を引用しています。
「 Boys,Be ambitious 」(ボーイズ・ビィ・アンビシャス=少年よ、大志を抱け)の言葉で知られるクラーク博士は、1876年(明治9)、開校したばかりの札幌農学校(現在の北海道大学)に、初代教頭として着任しました。その際、開校にあたって定められた細かな校則を見て、クラーク博士はこう言ったそうです。
「規則で人間をつくることはできない。この学校に、校則はたった1つあればいい。それは『 Be Gentleman 』だ」
『 Be Gentleman 』意味は先ほども言ったとおり「紳士であれ」。本来ジェントルマン(紳士)は男性を指す言葉ですが、これは札幌農学校が当時は男子校だったからで、板三中の校則においては性別は関係ありません。板三中におけるジェントルマンとは「男女に関係なく、知性に富み、礼儀正しく、思いやりにあふれる人」と解釈してください。
本校の8・9年生は、常に「ジェントルマンとして、自分はどうあるべきか」を考えて行動しています。校則が1つしかないからといって、自分勝手な振る舞いをする人など一人もいません。それどころか校則が1つしかないことで、自ら考え自らを律する自律の精神を養っているのです。
この3年間皆さんも、細かなルールや規則に縛られるのでなく、紳士としてとるべき行動の物差しを自分たちでつくり、自ら守っていかなければなりません。
4つめの【1】は、ファースト・ペンギン(first penguin)の【1】です。 ファースト・ペンギンとは「1番目のペンギン」という意味です。
皆さんも知ってのとおり、ペンギンは群れで行動します。そんな群れの中から、エサとなる魚を求めて、シャチなどの天敵がいるかもしれない海に最初に飛び込む1羽のペンギンが、ファースト・ペンギンです。ペンギンの群れに、リーダーやボスはいません。しかし、最初に行動を起こした1羽に従おうとする習性があるそうです。そんな習性を利用し、隊列を組んでよちよち歩くペンギンの集団を見せる動物園もあります。
エサをとるために海に飛び込む時も、群れが同時に飛び込むわけではありません。お互いに牽制し合いながら、誰かが最初に飛び込むのを待ちます。そして、最初の1羽が飛び込んだのをきっかけに、次々に海に入っていくのです。
そのように勇気をもって、他に先駆け新たな挑戦をする人のことを、欧米では敬意を込めて「1番目のペンギン」つまり、ファースト・ペンギンと呼ぶのだそうです。
皆さんが入学した板橋第三中学校は、生徒も先生も他の学校に先駆けて、様々なことに挑戦しています。例えば、先ほど紹介した「校則の1本化」もそうです。また、Chromebookを有効活用することで構築した、次世代型の学習支援・生活支援のあり方も、その1つです。ぜひ皆さんも、そんなファースト・ペンギンの気概をもって、失敗を恐れず新たな挑戦をしてください。
最後に5番目の【1】は、2年前から先生方が取り組んでいるプロジェクト名に関係します。その名称を『誰1人生徒を取り残さないプロジェクト』、頭文字を取って略称DSTPと言います。
一例を挙げると、本校には5年前からSBSルームという部屋が設置してあります。詳しいことは改めて説明しますが、教室にいづらさを感じたり、ずっと集団の中にいると苦しくなる生徒のためにつくった部屋です。皆さんにとっては教室でも家庭でもない「第3の居場所」と言って良いでしょう。
そのSBSルームに象徴されるように本校では、生徒の多様性を認め、学習・生活の両面で誰1人生徒を取り残さない教育活動を展開しています。その研究と実践の成果を、板橋区教育委員会の委嘱を受けた研究奨励校として、今年12月に発表します。
これもここで詳しい説明はしませんが、最後の【1】は「板三中は『誰1人生徒を取り残さない』」の【1】なのです。
では、今この瞬間皆さんは、先生方や先輩たちと「東京で1番」の夢を共有し、その実現を目指すかけがえのない仲間になりました。その自覚と、私が話した5つの【1】を強く胸に刻んで中学校生活をスタートさせるようお願いして、式辞といたします。