学校日記

8年 酪農講話

公開日
2025/10/03
更新日
2025/10/03

日々の様子

絶賛!学校公開中です。

平日にもかかわらず、多くの保護者の方のご来校

ありがとうございます。


8年生は、酪農講話です。

中台中の卒業生である川口谷さんが、手がける新しい酪農の形についてのお話や、今後の未来へ向けて

実体験を交えながら、8年生に伝わるように、丁寧にお話をしてくださいました。


「カーム角山(カームかくやま)」とは、

北海道江別市角山(かくやま)にある大規模な酪農企業の名称です。

正式名称は株式会社Kalm(カーム)角山です。

これは、単なる牧場ではなく、最新の技術と経営手法を取り入れた、日本の酪農業界で注目されている企業です。


Kalm角山の主な特徴

「メガロボットファーム」としての近代化:


酪農業の課題である人手不足や高齢化に対応するため、搾乳ロボットを多数導入し、大規模で自動化された酪農経営を行っています。

牛の体調管理もコンピューターやAIが行い、牛が自分のタイミングで搾乳できる環境を整えています。


循環型農業の推進:


環境負荷の低減に積極的に取り組んでいます。

牛の糞尿を使ってバイオマスエネルギー発電を行い、電力として利用しています。

排水をクリーンにして河川に戻したり、近隣農家と連携して資源(肥料など)を再利用したりするなど、

地域全体で持続可能な循環型農業の仕組みを構築しています。


酪農経営の企業化:

2014年に地域の酪農家5軒が集まって共同法人として設立されました。

後継者不在や離農の問題を抱える地域で、個々の家族経営を企業として組織化し、酪農の安定的な継続と発展を目指しています。

近い将来、オーガニック牛乳の量産化や「酪農業のフランチャイズ」展開なども視野に入れている、革新的な企業です。


「カーム角山」は、北海道の酪農の未来を担う新しいモデルとして、大きな注目を集めています。


株式会社Kalm(カーム)角山について、その革新的な取り組みの核となる

「メガロボットファーム」と「循環型農業」の仕組み


1. メガロボットファームとしてのスマート酪農

Kalm角山は、日本の酪農業界における課題(人手不足、後継者難、経営の安定化)を解決するために、

大規模化と最新技術の導入を徹底しています。


ロボット・AIによる効率化とストレス軽減

自動搾乳ロボット: 8台もの搾乳ロボットを導入し、24時間無人での搾乳を可能にしています。


牛の自由移動(フリーストール牛舎): 牛は牛舎内を自由に歩き回ることができ、ストレスが軽減されています。


「牛が選ぶ搾乳」: 牛の首輪につけられたセンサー(発信器)が一頭一頭の健康状態や搾乳に適したタイミングを管理し、

データ化しています。搾乳に適した牛だけがロボットのゲートを通り、自発的に搾乳を受けます。


病気の早期発見: AIとセンサーによる個体管理により、乳熱などの病気の兆候を早期に発見しやすくなり、健康的な牛の育成につながっています。


経営への効果

大規模化(約500頭の乳牛を飼養)によりスケールメリットを活かし、コスト削減と生産性の向上を実現しています。

搾乳にかかる電力を通常より大幅にカットし、CO₂排出量の削減にも貢献しています。


2. 独自の「地域循環型農業」の仕組み

酪農における「糞尿処理」と「環境負荷」を逆に資源に変える、独自の持続可能なサイクルを構築しています。


資源の流れ 仕組み 貢献・効果

【エネルギー生産】 バイオガスプラントを稼働。牛の糞尿をメタン発酵させ、バイオガス発電で電気を生み出します。

1. 臭い対策:都市近郊酪農の課題である糞尿の臭いを抑制。

2. 収益化:発電した電気は電力会社に売却し、経営を安定化。

3. 熱の再利用:発電時に出る熱はプラントの暖房に再利用。

【肥料・敷料】 糞尿を発酵させた後の残さ(消化液など)も無駄にしません。

1. 肥料:消化液をデントコーンや牧草用の液体肥料として近隣農家に提供。

2. 敷料:糞尿の固形分を処理して、牛の寝床(ベッド)の敷き藁として再利用。


【地域のゴミの再利用】 地域で発生する産業廃棄物を牛のエサや敷料に活用しています。

1. エサ:近郊農家から出る小麦の皮や大豆かすを牛の飼料に。

2. 敷料・発電:飲料メーカーから出るコーヒーかすを牛のベッドやバイオガス発電の資源として活用。


この徹底した循環システムにより、Kalm角山は「飼料」「生乳」「糞尿」「エネルギー」がつながる環境バリューチェーンを構築し、

地域社会に貢献しています。


新たな事業展開とブランド展開

Kalm角山は、生乳生産の合理化・大規模化だけでなく、その生乳を活かした商品開発にも力を入れています。


オーガニック牛乳市場への参入:

グループ会社である北のオーガニックファーム株式会社を設立し、オーガニック牛乳の生産・販売に積極的に参入しています。

大規模酪農の技術を活かしながら、牛に優しい有機栽培のエサを与えるなど、付加価値の高い牛乳の生産を行っています。

このオーガニック牛乳は、大手会員制倉庫型店舗のコストコ(COSTCO)の全国店舗などでも販売実績があり、市場から高い評価を受けています。


新ブランドの監修・連携:

近年、北海道の老舗牧場である町村農場と連携し、北海道素材を活かしたキャラメルミルクスイーツ専門店「BLUE POND」

の立ち上げを監修するなど、他社との協業を通じて生乳の価値向上を図っています。


 経営ビジョンと社会的評価

「Aim to Kalm future!(穏やかな未来を目指す)」:

これがKalm角山の企業理念であり、持続可能な酪農経営と地域社会の発展を同時に目指しています。


日本初のIPOを目指す:

将来的には、酪農業界で日本初の新規株式公開(IPO)を目指すという、極めて意欲的な経営ビジョンを掲げています。

これは、酪農業を単なる家業ではなく、社会的責任を伴う成長産業として確立しようという強い意志の表れです。


数々のメディア掲載・受賞:

その先進的な取り組み(スマート農業、循環型農業)は国内外で注目されており、

ニューヨーク・タイムズや日本経済新聞などのメディアに多数掲載されています。


「北大マルシェアワード」で最優秀賞を受賞するなど、高い評価を得ています。


最新の設備投資(2025年9月)

搾乳ロボットの更新:

最新のニュースとして、2025年9月には主力設備である搾乳ロボットを新しくしたとの情報があり、

継続的な技術への投資と効率化を追求していることがわかります。

このように、カーム角山は「最新技術による大規模化」と「地域資源の循環」を両立させながら、

日本の酪農業の未来を切り開くパイオニアとして活動を続けています。


現状に満足せずに、「挑戦」し続ける姿や、誰かの為にという「貢献」心。

今日の講話を聞いて、8年生たちのなかに、どんな想いが芽生えたのでしょう。


自分自身の可能性は、無限大であり、どう生かすかはすべて、自分次第!

ぜひ、夢を見るだけで満足するのではなく、自分の力で叶え、さらに

夢を育て、またその夢が誰かの夢になるような未来になってくれる

ことを願っています。


川口谷さん、毎年、とてもありがたいお話をはじめとして、

牛乳やヨーグルトなどの手配まで、ありがとうございます。

中台中の誇りです。後輩も、その背中に憧れて、そしてその背中を追って、

たくましく成長していくことでしょう。



    記事 風見 一統