この冬『 THE FIRST SLAM DUNK 』(ザ・ファースト・スラム・ダンク)というアニメ映画が大ヒットしました。冬休み中に観た人もいるようですが、原作は33年前から6年間にわたり少年誌に連載された漫画『SLAM DUNK 』です。
簡単にあらすじを言うと、主人公は長身と身体能力だけが取り柄の桜木花道という不良高校生です。その花道が、ひょんなことからバスケットボール部に入部することになり、チームメイトと共に成長していく姿を描いています。
私は、娘の影響もあってこの漫画にハマった1人です。連載終了後は、コミックス全31巻を「大人買い」したほどです。そんな私ですから『 THE FIRST SLAM DUNK 』も当然観にいきました。
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映画は、原作で描かれた最後の試合を、漫画とは少し違った視点で描いていました。ただし、ストーリーは同じなので、私が漫画で好きだった場面も、随所に散りばめられていました。
その1つに、花道が試合中のアクシデントで背中に大けがをして倒れ、意識を失ってしまう場面があります。かつて全日本代表でもあった監督は、花道にそのまま試合を続けさせると、将来の選手生命が危うくなると考え、交代を判断します。
その監督に対し花道は、痛みに耐えふらふらになりながら立ち上がり、こう言って選手交代を断るのです(失礼にも花道は、監督を『オヤジ』と呼んでいました)。
「オヤジの栄光時代は、いつだよ? 全日本の時か…? オレは…、オレは今なんだよ!」
私がこの場面を好きなのは、花道の台詞に共感するからです。といっても、私は漫画の主人公のようにかっこよくないし、もっと言えば、自分に「栄光時代」があったとも思いません。ただ、人生の中で何回かは、他の時期より少しだけ眩しかった瞬間(とき)があったように思えます。
かすかな輝きだったかもしれませんが、そんな瞬間を「青春」と呼べるなら、それは皆さんと同じ中学生時代にもありました。高校・大学時代や、社会人になってからも、それなりの「青春」がありました。
では、皆さん。「栄光」と呼べるほどの光ではないにせよ、私にとってその中で一番眩しかった瞬間は、いつだと思いますか? ここだけは少し乱暴な花道の言葉を借りて、私はこう断言できます。
「それは、今なんだよ!」
「えっ! 今が校長先生の青春?」という皆さんの心の叫び、もしくは悲鳴が聞こえてきそうです。そんな皆さんに、アメリカの実業家サミュエル・ウルマンという人の書いた詩『Youth(青春)』より、次の一節を紹介します。ウルマンは100年近く前に亡くなっていますが、実に70代の時に書いた詩の中でこう言っているのです。
Youth is not a time of life, it is a state of mind.(青春とは、人生の一時期のことではなく、心のあり方のことだ)
さて、間もなく高齢者の仲間入りをする私から、若い皆さんへの挑戦状です。
私は、情熱あふれる先生方と、素直で元気な生徒の皆さんと共に「東京で一番の学校」を目指している今こそが、自分の人生で一番輝いている瞬間=青春だと思っています。一方で皆さんは、今この瞬間を輝かせていますか?
皆さんは、まだ過去を振り返るような年齢ではないと思いますが、過去の栄光や輝きに目を奪われていては、今を輝かせられません。そして、今を輝かせられない者には、未来を輝かせることもできないと、私は思っています。そう思うからこそ、私は花道の台詞に共感を覚えるのです。
人生を輝かせる上で「先を見通した生き方」「計画的な生き方」は、とても大事です。その一方で、人生は「その瞬間、その瞬間」の積み重ねでもあります。だから、私は「今、この瞬間をどう輝かせるか」という生き方も、大事にしていきたいと思っています。