学校日記

『心の瞳』~8D~

公開日
2025/10/21
更新日
2025/10/21

日々の様子

8年D組 『心の瞳』

歌手: 坂本 九

作詞: 荒木 とよひさ

作曲: 三木 たかし

リリース: 1985年5月

背景: シングル「懐しきlove-song」のB面(カップリング)曲としてリリースされました。

リリースからわずか約3ヶ月後、坂本九さんは日本航空123便墜落事故で急逝されました。


2. 歌詞の内容とテーマ

「心の瞳」は、夫婦愛・家族愛をテーマにした、究極のラブソングです。

メインメッセージ: 人生を遠回りしてきた主人公が、隣にいる「君」(妻や大切な人)と向き合うことの暖かさ、

        そして「心の瞳」で見つめれば真の愛がわかる、という内容です。

合唱曲としての意味: もともとは大人の愛の歌ですが、合唱曲として歌われる際には、

         生徒たちにとって「いつも支えてくれる大切な人(両親、友人、先生など)への感謝」や

         「目に見えない真実の愛や絆」を歌う歌として指導されます。卒業ソングとしても人気が高いのは、

         この「絆」を歌うテーマ性によるものです。


3. 合唱曲としての成立と普及 ※最後に、もっと詳しくお話しますね!乞うご期待!

この曲が合唱曲として広まった経緯には、非常に感動的な背景があります。

合唱への編曲: 坂本九さんの生前最後のラジオ番組でこの曲を聴いた長谷川 剛(はせがわ つよし)という中学校の音楽教師が、

「この歌には不思議な力がある。生徒たちに歌わせたい」と感じました。

当時、学校の授業で生徒が歌わないことに悩んでいた長谷川先生は、録音したカセットテープを基に自ら合唱曲に編曲しました。

広がり: 1986年3月の卒業式で生徒たちが歌った合唱が、保護者を通じて坂本九さんの妻である柏木由紀子さんのもとへ届けられました。

教科書採用: この合唱曲版が大きな反響を呼び、その後、音楽の教科書に掲載されるなどして、

     中学校・高等学校を中心に全国に広がり、定番の合唱曲となりました。


4. 合唱の編成と編曲

編成: 主に混声三部合唱(ソプラノ、アルト、男声)で歌われることが多いですが、同声二部合唱や女声三部合唱など、様々な編成があります。


編曲者:

長谷川 剛:最初に合唱曲として広がるきっかけを作った編曲者。

横山 潤子、滝口 亮介など:現在、楽譜が出版されている合唱版には、複数の編曲家によるものがあります。


1. 感情表現と曲想

「心の瞳」は、大切な人への愛と感謝、そして人生を振り返る温かさを歌う曲です。

語りかけるように: 歌い出しのソロやユニゾン(斉唱)の部分は、聴いている人に静かに語りかけるような、

穏やかで優しい歌い方を心がけます。

深まる愛の表現: 「愛すること それがどんなことだかわかりかけてきた」の部分は、感情が少しずつ高まっていくように、

声に温かみと広がりを加えましょう。

サビの「永遠」: サビの「心だけは 決して変わらない 絆で結ばれてる」は、この曲の最も強いメッセージです。

感情を爆発させるのではなく、優しく、深く、力強い響きで、確かな絆と永遠性を表現します。

未来への希望: 終わりに向かって、穏やかさと共に、未来への希望を感じさせるような、明るく透明感のある響きを目指します。

2. 発声と発音の技術

この曲はテンポがゆったりしているため、丁寧な発声と発音が響きの鍵になります。

母音の響き: 日本語の発音を明確にしつつ、母音(特に「あ」「お」)を縦に開いて深く響かせることが重要です。

特に「心(こころ)の瞳(ひとみ)」の母音の響きを統一することで、

統一感のある美しいハーモニーが生まれます。

子音の処理: 「けっして」「いつもそばで」などの子音は、はっきりと丁寧に発音することで、歌詞を明確に伝えます。

ただし、強くなりすぎないよう、優しくクリアに。

ロングトーンの安定: ゆっくりとしたテンポのため、長い音符(ロングトーン)が多く出てきます。

特に、男声やアルトが支えとなる音(ハモリ)を長く伸ばす箇所では、音程が下がりやすいので、

しっかりと息を支え、音の芯を保つように意識しましょう。

ブレス(息継ぎ): 決められたブレスの場所を守り、ブレスの際は深く、静かに息を吸うことで、

曲の流れを途切れさせないようにします。

3. ハーモニーとフレージング縦の線(和音)の意識:

サビの合唱部分では、各パートが自分の音だけでなく、他のパートと音が美しく溶け合っているか、

縦の和音を聴き合うことが非常に大切です。特に、コードが変わる瞬間は音程に注意しましょう。

フレージング(音楽の区切り): 歌詞やメロディーの区切りを意識し、フレーズの始まりと終わりを丁寧に歌うことで、

表現に抑揚と深みが生まれます。

例えば、「愛すること<それがどんなことだかわかりかけてきた」というように、

一つの大きな意味のまとまりとして捉えて歌いましょう。

音量のコントロール: 楽譜に書かれている強弱記号($p$、 $mp$、 $f$など)を正確に守りつつ、

単調にならないように、フレーズの中で緩やかなクレッシェンド(だんだん強く)やデクレッシェンド(だんだん弱く)をつけ、

音楽的な流れを作り出します。

これらのポイントを意識して練習することで、「心の瞳」の温かく感動的な世界を表現することができます。


心の瞳で 君を見つめれば 愛すること それが どんなことだか わかりかけてきた

言葉で言えない 胸の暖かさ 遠まわりをしてた 人生だけど

君だけが いまでは 愛のすべて 時の歩み いつも そばで わかち合える


 夢のまた夢を 人は見てるけど 愛すること だけは いつの時代も 永遠のものだから

長い年月を 歩き疲れたら ほほえみなげかけて 手をさしのべて

いたわり合えたら 愛の深さ 時の重さ 何も言わず わかりあえる


 たとえ明日が 少しずつ 見えてきても それは 生きてきた 足跡 人生があるからさ

いつか若さを なくしても 心だけは けっして変わらない 絆で結ばれてる

愛すること それが どんなことだか わかりかけてきた

愛のすべて 時の歩み いつも そばで わかち合える 心の瞳で 君を見つめれば


合唱曲「心の瞳」には、その普及に欠かせない、感動的な秘話があります。

秘話:一人の音楽教師と坂本九さんの「最後の歌」

「心の瞳」が歌謡曲から国民的な合唱曲へと広まった背景には、一人の中学校教師の強い思いと、坂本九さんの死が深く関わっています。

坂本九さんの遺作 「心の瞳」は、坂本九さんが1985年5月にリリースしたシングル(「懐しきlove-song」のB面)に収録されていました。同年8月12日、坂本九さんは日本航空123便墜落事故で急逝されました。この曲は、坂本さんの実質的な遺作となりました。

教師との出会い 千葉県市川市の中学校に勤務していた長谷川 剛(はせがわ つよし)という音楽教師がいました。

当時の長谷川先生は、校内暴力などの影響で「合唱の授業で生徒が歌わない」ことに悩んでいました。

そんな折、彼は坂本九さんが亡くなる直前に収録された生前最後のラジオ番組で、この「心の瞳」を聴きました。

長谷川先生は、この曲のメロディーと歌詞に「歌に不思議な力がある。この歌なら子どもたちに歌わせたい」

という強いインスピレーションを受けます。

合唱曲への編曲と広がり 長谷川先生は、手元に残っていたカセットテープの録音を基に、

自力でこの曲を合唱曲として編曲しました。

生徒たちはこの曲を熱心に歌い、1986年3月の卒業式でも歌われました。

この卒業式の録音テープが、生徒の保護者を通じて、坂本九さんの妻である

女優の柏木由紀子さんのもとへ届けられました。

遺族と世間への広がり 坂本九さん自身が、生前この曲を

「この曲は僕たちのことを歌ったような曲だよ!ユッコ(柏木さんの愛称)が聞いたら泣いちゃうよ!」と

語っていたと言われています。

テレビで一度も歌われることのなかったこの曲が、見知らぬ中学校で、

生徒たちの純粋な歌声に乗って響いていることに、柏木さんは深く感動しました。

このエピソードがメディアで紹介されるなどして大きな反響を呼び、

その後、「心の瞳」は合唱曲として正式に出版され、中学校の音楽教科書にも掲載されるほどの定番曲となりました。

このように、「心の瞳」は、歌手である坂本九さんの死を乗り越え、

一人の教師の情熱と生徒たちの歌声によって、世代を超えて歌い継がれる名曲となったのです。


誰もが知る、「坂本九さん」の渾身の一曲です。これから先も、ずっとずっと歌い継がれていく名曲といっても

過言ではありません。

今年の「心の瞳」が、どう表現されるのか、とても楽しみです。

涙なくして聴けない、歌えない、合唱が終わったときの余韻も含めて、会場全体を

激震させるような心震わすハーモニーを期待しています。


     記事 風見 一統