先日、本校のたった1つの校則『 Be Gentleman(ビィ・ジェントルマン=紳士であれ)』と関連する少し素敵な話を、ある先生から伺いました。皆さんにも紹介します。
最近は蒸し暑い日が増え、ほぼ全員の男子生徒がワイシャツ姿で学校生活を送っています。そうした中、ある生徒(Aさん)のワイシャツの背中に、派手なプリントが透けて見えていたのだそうです。
私が教員になった頃は、学校が荒れた時代だったので【喧嘩上等】という大きな文字や、不気味なドクロ(骸骨)がプリントされたTシャツを、わざとワイシャツの下に着る生徒が大勢いました。それを透けて見せることで、彼らは自分を強く見せようとしたり、虚勢を張ったりしていたのです。
そんな生徒指導に手を焼いた当時の教員は、学校を立て直す一助として、校則などで下着の色を「白の無地」に統一しました。私も荒れた学校を経験しているので、そのこと自体は否定しません。
しかし、今も当時のトラウマ(苦い記憶)を引きずり「白の無地」を目的化することには、違和感を覚えます。
※ 続きは、下の『おりたたみ記事』をクリックしてください。
ワイシャツの下に下着を着ることには、それ相応の目的があります。その目的のために下着を着るのであり、「白の無地」を着ることが目的なのではありません。
ただ、市販されている男性用下着の大半が「白の無地」なので、下着を着る目的に照らして購入すれば、結果として「白の無地」が多くなるだけの話です。
では、本校の先生は、Aさんにどのような話をしたのでしょうか。
まず先生は、Aさんに「そのようなTシャツを着てきた理由」を尋ねました。すると、Aさんは「パジャマ代わりに着ていたTシャツを、うっかりそのまま着てきてしまった」と、正直に答えてくれたといいます。そこで、先生は以下のような話をしたのだそうです。
●下着(肌着)は、その言葉からもわかるように、他の衣類の下に着たり、肌に密着させて着たりするものであること。
●下着(肌着)は、汗や皮脂を吸収するなど体を清潔に保つために着るので、基本的には毎日着替え洗濯するものであること。そのため吸水性や洗濯時の強度、伸縮性、乾きやすさなどを重視した繊維でつくられていること。
●そんな下着(肌着)に対してTシャツは、アウター(上着)としてつくられていること。そのため下着と違い素材やデザインは、機能性よりファッション性を重視していること。
●一例を挙げれば、プリント部分は吸水性や通気性が悪いこと。また、デザインもゆったりしているので、他の衣類の下に着るインナーとしては適していないこと。
●もし、下着(肌着)を着られない事情があれば、先生からおうちの方に話をすることもできること。
以上のような話を、Aさんは素直に聴いてくれていたそうです。もちろん、先生がおうちの方に話をする必要もありませんでした。
そして、もうおわかりのように、先生の話の中に「白の無地」という言葉は1度も出てきません。しかし、翌日私が先生に確認したところ、Aさんは当たり前のように「白い無地の下着」を着用し、登校してきたとのことでした。
私は、この話を伺ったとき、板三中がまた一歩「東京で一番」に近づいたことを感じました。
生徒の人格を認め、一人の人間として生徒に向き合う先生。そんな先生の話を、ふてくされたり開き直ったりせず素直に聞き入れる生徒。板三中は、そういう先生と生徒にあふれています。板三中は、先生も生徒もジェントルマンです。
…と、今日の話をそうまとめようと思った時、私はふと気づきました。『 Be Gentleman 』は、本校のたった1つの校則であると同時に、本校の生徒と先生方の「紳士協定」でもあるのですよね。