9年生の英語の教科書には、歴代のノーベル平和賞受賞者を取り上げた単元があります。では、今年のノーベル平和賞受賞者は誰か、知っているでしょうか。実は、今年は個人ではなく、世界各地で食糧支援を行っているWFP(世界食糧計画)という国連の機関が選ばれました。
その国連総会で2015年に採択され、2030年までの達成を目指す17の目標(世界の約束)が、SDGs(持続可能な開発目標)です。そして、SDGsの中にも、30年までに世界から飢餓をなくす「ゼロ・ハンガー(飢餓をゼロに)」があります。
ちなみに【飢餓】とは、人が健康であるために必要且つ十分な食べ物が、不足している状態を言います。
しかし、さる10月中旬、WFPと協力して食糧問題に取り組むFAO(国連食糧農業機関)が、大変気になる報告書を発表しました。それによると、昨年の飢餓人口は6億8800万人で、一昨年に比べ1000万人増えたのだそうです。
さらに衝撃的だったのは、世界的に感染が拡大した新型コロナウイルスの影響で、今年の世界の飢餓人口は最大で1億3200万人増える可能性があるとの指摘でした。感染拡大により、失業者が増えたり物流が滞ったりしたことで、安定した食糧確保が難しくなったからです。
すでに国連は17のSDGsのうち「ゼロ・ハンガー(飢餓をゼロに)」は、達成困難との見方を示しています。それどころか逆にこのままでは、30年の飢餓人口は8億4000万人に上ると予測しているのです。
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さて、8・9年生の皆さんは覚えているかもしれませんが、例年2学期の終業式では、皆さんに英語の曲を聴いてもらっています。
今年も『Do They Know It's Christmas ? 』(ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?)という曲を聴いてもらいます。タイトルは「彼らは、今日がクリスマスだということを知っているのだろうか?」という意味です。
この曲は1984年、約100万人が飢饉で死亡したアフリカ・エチオピアを救済するためのチャリティーソングとして作られ、ワム!のジョージ・マイケル、カルチャー・クラブのボーイ・ジョージといった、当時のイギリスのトップミュージシャンたちによって歌われました。
余談ですが翌年、この曲の影響を受けたマイケル・ジャクソンなどアメリカのミュージシャンたちが、やはりアフリカの食糧難を救済するために歌ったのが、有名な『 We Are The World 』(ウイ アー ザ ワールド)です。
では、本日発行した校長通信第2面に歌詞を載せておいたので、それも参照しながら『 Do They Know It's Christmas ? 』を聴いてみてください。
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(CDを聴いてもらいました)
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日本でも、宗教に関係なくクリスマスを祝う習慣はすっかり定着しました。今年は、多くの人がステイホームで、ちょっとしたご馳走やケーキを食べ、楽しく語らうことでしょう。ただ世界には、食事が「楽しむもの・味わうもの」ではなく「生き延びるためのもの」という人たちもいるのですよ。
例えば、現在アフリカ地域では、5人に1人が飢餓に苦しんでいます。その背景には、干ばつなどの気候変動に加え、各地で頻発する紛争の影響があります。さらに今年は、そこにコロナ禍が追い打ちをかけました。
今こうしている間もアフリカには、ご馳走やケーキはおろか一切れのパンが無かったばかりに、栄養失調で命を落とす子どもたちがいるのです。
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同じ地球上の同じ日に、きらびやかなイルミネーションの下、笑顔で食卓を囲む人がいる一方、わずかな食物でなんとか飢えをしのぎ、生きて明日を迎えられるよう夜空の星に祈っている人がいます。
「ゼロ・ハンガー(飢餓をゼロに)」
残念ながら現在の国際社会は、その約束を果たすドラスティックな(思い切った)方策を打ち出せずにいます。ただし、私たちは微力とはいえ、けっして無力ではありません。一人一人にできるささやかな手立てはあるはずです。
例えば、まだ食べられるのに食べ物を捨てる「食品ロス」を減らすのも、その一つです。統計によると、現在日本では全国民が毎日茶碗1杯分を捨てている計算になるのだそうです。それらの食品ロスを減少させることは、食糧資源の有効活用や、飢餓に苦しむ国への支援強化につながるでしょう。
また、地理や家庭科、9年生の英語の教科書では「フェアトレード」を取り上げています。途上国の製品を、適正な価格で購入する貿易の仕組みのことです。私たちが日常の買い物で、そのフェアトレード認証商品の購入を心がければ、それは途上国の暮らしの改善や貧困の解消に役立つはずです。
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クリスマスやお正月を控えた今、皆さんも改めて考えてください。
誰一人置き去りにせず、全ての子どもたちが笑顔で「メリー・クリスマス」「ハッピー・ニュー・イヤー」と言える世界にするため、そして「世界の約束」を守るため、自分に何ができるのかを。
どうぞ良い年を迎えてください。