1学期末の話になりますが、9年生が国語の授業で『諺(ことわざ)』を取り上げていました。自分が興味を持った諺の意味を調べ、例文を考えるという学習です。
教科書では諺を【古くから人々の間で言い習わされてきた、教訓や知恵、行動の指針などを表す言葉】と説明しています。
各自が調べた諺はChromebookで共有したので、私も確認することができました。そのため偶然5人もの人が調べていた【出る杭は打たれる】という諺が目を引きました。
【出る杭は打たれる】 おそらく語源は「並べて地面に打った中で1本だけ出ている杭は、高さを揃えるために打ち叩かれる」ということでしょう。それが「周囲より目立つ者、周囲と違っている者は、人の攻撃や批判の対象になるから気をつけなさい」という教訓=諺になったのではないかと思われます。
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諺ではありませんが、現代社会には【同調圧力】という言葉もあります。「少数派に対し多数派が、暗黙のうちに考えや行動を自分たちと同じにするよう求める圧力」のことです。
日本はその同調圧力の強い社会と言われますが、【出る杭は打たれる】という諺が生まれた背景には、そんな日本社会の特徴もあるのかもしれません。
諺は言い回しが決まっているので、勝手にアレンジすることはできません。しかし、かつて「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助(故人)は、【出る杭は…】の諺を引用して意味深長な(奥深く含みのある)言葉を残しています。
松下幸之助は、その名からもわかるように松下電器産業(現パナソニックホールディングス)という世界に名だたる企業を、一代で築き上げた実業家・経営者です。
【出る杭は打たれるが、出すぎた杭は打たれない】
これが、その松下幸之助の言葉です。幼い頃の松下幸之助は父親が破産したため小学校も中退せざるを得なくなり、丁稚奉公(幼い少年が商店などに住み込んで下働きをすること)に出されます。
細かい経歴は省きますが、その後も苦労や失敗を重ねながら大企業を興した人物の言葉だけに、私は先の言葉をこう解釈しています。「たとえ人からなんと言われようと、不断の努力によって周囲から突き抜けるほどになった者を、もう人は叩くことはできないし、叩く気にもならない」
「周囲より目立つ」「周囲と違う」つまり「出る杭」であることは、けっして恐れることでも恥ずかしいことでもありません。
ただし、「周囲より目立つ」と言っても、外見だけ目立とうとしている人が「出る杭」ではありません。「周囲と違う」と言っても、わざと人と違う言動をとる人のことも「出る杭」とは言いません。
地中に埋まっている杭が少しずつ地表に出てくるように、人の目に触れないところで努力を積み重ね、少しずつ能力や個性を発揮してくる人が「出る杭」です。やがてその人が、同調圧力すら跳ね返すほどの存在感を放つようになった時、松下幸之助の言う「出すぎた杭」にまでなるのだと思います。
自分の能力や個性を、不断の努力によって開花させるという意味で、私は皆さんに「出る杭・出すぎた杭」になってほしいと思います。1年で最も長い2学期、まず自分の個性や能力を知るために、様々な挑戦をしてください。
初めは失敗するかもしれません。しかし、失敗は挑戦した証です。若い皆さんが悔やむべきは、失敗ではありません。自分の能力や個性が何であるか分からず、それを伸ばす努力もできずにいること、つまり【出ない杭は腐る】ということなのです。
最後に、松下幸之助の言葉をもう1つ紹介して、話を終わります。
【失敗したところでやめるから失敗になる。成功するところまで続ければ、それは成功になる】