では、老衰はさておき病気でも事故でもなく、子どもたちを死に至らしめる「ある状態」とは何でしょう。1つは「急性栄養失調」という体の状態です。聞きなれない言葉かもしれませんが、「生命維持に必要な栄養が不足し、急激に体重が減り、ただちに治療を施さなければ死に至る可能性が高い危険な状態」と言われています。
2年前の戦闘開始以来、救援物資の搬入が滞り、現在ガザでは5歳未満の子ども5万4000人以上が、その急性栄養失調に陥っていると推計されています。それだけではありません、先日見たTVニュースは、この2年間の戦闘に巻き込まれて、約2万人の子どもが命を落としたと伝えていました。
ガザの子どもたちは、病気や事故ではなく、急性栄養失調という体の状態と、暮らしている場所の戦闘状態という2つの「状態」によって、死の危機に瀕しているのです。そして、言うまでもなくその2つの「状態」をつくり出しているのは、戦争です。
さて、例年2学期の終業式は、クリスマス(イブ)と重なります。 そんなことから私は、毎年2学期の終業式ではクリスマスとも関連する曲を聴いてもらい、その曲に込められたメッセージについて考えてもらっています。
今年は、元ビートルズのジョン・レノン(故人)の『 Happy Xmas 』という曲を聴いてください。2年前にも聴いてもらったので、もしかしたら9年生の中には覚えている人がいるかもしれません。
【 MVを視聴しながら、曲を聴いてもらいました 】
歌詞から分かるように、この曲のメッセージはいたって明快です。
War is over,if you want it.War is over now …
(戦争は終わるよ、もし君がそれを望むなら。戦争は終わるよ、今すぐに)
一方、明快でわかりやすいだけに「そんなに簡単な話ではない」という感想を抱いた人もいるかと思います。確かにその通りです。現実問題として、現在世界各地で起きている戦争や紛争を、そう簡単に終わらせることはできないでしょう。ただ、それでも1つ言えるのは、希望は捨ててはいけないということです。実現を諦め、願うことさえやめた時、希望は絶望へと変わります。
9年生の国語の教科書に載っている『故郷』という小説は、最後を次のように締めくくっています。
希望とは、もともとあるものともいえぬし、ないものともいえない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。
世界には、サンタクロースに願うプレゼントが「一切れのパン」であり「戦争の終わり」であるという子どもたちがいます。私たちは、その子たちのサンタクロースにはなれません。しかし、道なき道を歩く1人にはなれるはずです。いつか必ず希望は実現すると信じ、諦めず願い続けましょう。
どうか良い年を迎えてください。