古くから日本には、二十四節気といって1年間を「冬至」や「立春」「秋分」など24に分けた区分法があります。現代社会で実用的な意味は薄れていますが、季節の節目を表したり伝統行事を行ったりするうえで用いられています。今週20日は、その二十四節気の1つ「大寒」です。
大きな寒さと書くことからもわかるように、昔から「大寒」をはさんで前後2週間ぐらいが、1年で最も寒さの厳しい頃と言われます。にもかかわらずこの時期、私は夏服で登校している人がいるのを気にしています。
それが【子どもは風の子】=元気の表れであれば良いのですが、そういう人が寒そうに背を丸め、ポケットに手を突っ込んでいるのを見ると「だったら、なぜ防寒着を着ないのか?」と心配になるのです。
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多くの学校が校則で夏服・冬服の着用期間を定めているのに対し、本校ではいわゆる「衣替え」の時期を指定していません。本校は「暑さ・寒さの感じ方は人によって異なるので、一律に定めるものではない」と考えているからです。
ただし、それは言い方を変えれば「寒暖差に応じた適切な服装を、自分で考えなさい」ということでもあります。したがって、たった1つの校則『 Be Gentleman(紳士であれ)』の付則【あじみこし】(挨拶・時間・身だしなみ・言葉遣い・姿勢)の【み】=紳士の身だしなみにも繋がるのです。
一方、冬服を着ている人の中にも、ポケットに手を突っ込んで歩いていて、私に注意される人がいます。そちらは同じ【あじみこし】でも、身だしなみではなく【し】=紳士の姿勢に繋がる注意です。
姿勢には、そのときの心のありようが表れます。姿勢と心には、相関関係があるのです。だからこそ私は、逆に姿勢を意識的につくることで、自分の内面にも働きかけられると思っています。
例えば、体育の授業で柔道に取り組んだ時のことを思い出してください。畳の上で背筋を伸ばしてきちんと正座した時、他の種目とはまた違う緊張感を覚えた人も、いるのではないでしょうか。姿勢が、心に影響を及ぼした瞬間です。
同じようなことが、勉強にも言えます。正しい学習姿勢(机等に向かう姿勢)は、全身の血行を良くし、脳に送り込む酸素量を増やします。すると、長時間勉強していても、集中力や学習意欲が持続します。これも、姿勢が心に影響を及ぼす一例と言えるでしょう。
また、正しい姿勢で食事をすると、内臓が圧迫されないので消化・吸収が良くなります。すると、食事もより美味しく感じられます。美味しい食事をいただくことで、それをつくってくれた人への感謝の気持ち、さらには食事ができること自体への感謝の気持ちも湧いてくることでしょう。
このように、意識的につくった良い姿勢は、体はもちろん心にも良い影響を及ぼすのです。
さて、話を元に戻します。
なぜ、私はポケットに手を突っ込んでいる人を注意するのだと思いますか? 最大の理由は、転んだときに危険だからです。しかし、それだけではありません。
「風雪」という言葉があります。雪を伴って吹く冷たい風のことです。転じて、厳しい試練にたとえられることから【風雪に耐える】(苦労や困難に負けず乗り越える)という慣用句も生まれました。
ポケットに手を突っ込んで背を丸め、風雪から顔を背ける姿勢は、気持ちまで萎縮(元気がなくなること)させます。紳士として適切な身だしなみを整えた上で、颯爽と胸を張り、凛として風雪に立ち向かいましょう。
そう意識するだけで、そのぶん皆さんの心と体は鍛えられます。そして、鍛えられた心と体は、これから先の人生でさまざまな試練や困難に直面したとき、きっとそれを乗り越える力となるに違いありません。
9年生の皆さんの入学と同時に改定された本校の教育目標は【学ぶ・鍛える・思いやる】です。その中の【鍛える】を心身ともに意識して、1年で最も寒いこの時期を乗り切りましょう。