さて、本校の校則が『Be Gentleman(ビィ・ジェントルマン=紳士であれ)』に1本化されて5年が経ちました。改めてこの校則でいう「紳士」の意味を確認すると「男女に関係なく、知性に富み、礼儀正しく、思いやりにあふれる人」となっています。
6年前、それまで「…でなければいけない」「…してはならない」等と細かく定めていたたくさんの校則を1本化するにあたり、私は直接当時の板三中生と話し合いました。
そのときのことを思い返すと、肯定的意見としては「自分で考えて行動する力(自律の精神)を養える」といった内容が多かったと記憶しています。一方、否定的意見として圧倒的に多かったのは「髪の毛を染める、ピアスを付けて学校に来るなど、学校の雰囲気を悪くする人が出る」といった不安の声でした。
それら両方の声に耳を傾けた私は、当時(6年前)の板三中生に1つの問いを投げかけました。今同じ問いを、現役の板三中生である皆さんにも投げかけます。「個性とは、何ですか?」
それは、流行の服やアクセサリーを身につけることですか? 目立つ髪の色や髪形にすることですか? 好きな芸能人に自分を似せることですか? …と、それらを全否定するつもりはありません。ただ、もしそれを個性と考えているとすれば、私はそれこそ正真正銘の「ざんねんな個性」だと思うのです。なぜなら、それらはどれも意図的につくった個性であり、お金で買える個性だからです。
本来個性とは、つくるものでもお金で買うものでもありません。個性を「自分らしさ」という言葉に置き換えれば、分かりやすいかと思います。皆さんの「自分らしさ」とは、つくったり買ったりするものですか? 違うはずです。自分の内面がにじみ出たものだからこそ「自分らしさ」であり「個性」であると、私は思います。
話をラクダとデンキウナギに戻しましょう。ラクダが、2つのコブに蓄えた100kg近い脂肪をエネルギーに変え、約1か月何も食べずに生きていける特長を、私たちはとても真似できません。
自分の何十倍も大きな体を持つ凶暴なワニを、自ら発した強力な電気で撃退するデンキウナギの能力など、私たちがお金で手に入れようと思っても不可能です。
そうした特長や能力は、誰かの真似でもお金で買ったものでもありません。だからこそ、それらは「ざんねん」どころか「唯一無二の個性」なのだと思います。
ちなみに皆さんが運動会で踊った組ダンスのBGM『カラーバリエーション』の歌詞で私が1番好きなのは【僕らはコピーじゃなく唯一のオリジナル バグとアップデートを繰り返しながら 僕らは僕ららしくなってきたんだ】という部分です。
皆さんは、せっかく唯一無二の校則しかない中学校に通っているのです。ぜひ「誰かのコピー」や「ざんねんな個性」の持ち主になるのではなく、「唯一無二の個性」で輝く中学生になってください。