【文明の利器】という言葉があります。「文明によって作られた便利な道具・便利な機械」といった意味で使う言葉です。
したがって、もしそれが発明されていなかったら不便だろうなと思える道具や機械、例えばテレビや冷蔵庫、私が今こうして使っているパソコンも全て【文明の利器】と言えるでしょう。
一方、その【文明の利器】が、使い方を間違えると一転して【文明の凶器】となることもあります。
【文明の凶器】 正式にそういう言い方があるわけではありませんが、先ほどの【文明の利器】に合わせるならば「文明によって作られた危険な道具・危険な機械」といった意味になるでしょうか。典型的な例が、自動車(クルマ)です。
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自動車も、もし発明されていなければ不便と思える交通手段です。しかし、スピード違反や飲酒運転により、何の落ち度もない人が命を奪われる交通事故は、頻繁に発生しています。
このように、私たちにさまざまな恩恵を与えてくれる【文明の利器】も、それを使う人によって、あるいは、使い方を間違えてしまうことで、人を傷つけたり害を与えたりする【文明の凶器】になってしまうのです。
私がそんな話をしようと思ったのは、昨年暮れのある新聞でAI(人工知能)を使って性的な画像や動画をつくる「ディープフェイクポルノ」の特集記事を読んだからです。
簡単に言えば「ディープフェイクポルノ」とは、実在する人物の画像と卑猥な動画などの画像を、AIを使って組み合わせたものです。無断で偽画像を作られた人は、知らないところで画像を拡散され人権を傷つけられるなど、深刻な被害を受けることになります。
新聞記事によると、そうした悪質な事案は世界各国で起きており、法律により規制する動きも始まっているとのことでした。お隣の韓国では、実際に画像作成者が逮捕され、懲役10年の判決を受けたそうです。
そうした事例は、私たちにとっても「対岸の火事」(KMT=自分には被害が及ばないと考える、他者の苦痛や災難)ではありません。実際に「LINEを盛り上げたかった」「軽いノリだった」といった動機で、SNS上に不適切な画像や言葉を投稿した事例が過去にはあります。
そんなくだらない動機で、半永久的にネット上から削除できないかもしれない画像や、人の人権を踏みにじる言葉を簡単にアップしてしまう…。そういう人間は、何の考えもなしに刃物を振り回す危険人物と、さして変わらないでしょう。
では、そうした危険人物にならないために私たちは、どんなことを心がけたらよいのでしょうか。
簡単なことです。SNS上に何か情報を発信する際には、スマホの送信ボタンをタップする前に、自分の打った文面をゆっくり声に出して読み返してください。自分が送ろうとしている画像を拡大して、客観的に見直してください。
もし、それが不適切な情報だったなら、皆さんの中にささやかな良心、ほんの少しの想像力があれば、皆さんの指は送信ボタンではなく削除ボタンに向かうでしょう。
スマホは片手に収まる小さな【文明の利器】です。そのスマホに搭載されたAIもまた、これからの時代に欠かせない【文明の利器】でしょう。ただし、使い方を間違えると、一転して人を傷つける【文明の凶器】になるという覚悟をもって使わなければなりません。
「片手に収まる」「人を傷つける」という点では、まさにナイフなどの刃物と同じなのです。にもかかわらず、もしどうしてもその覚悟がもてないというのであれば、私からその人にせめてものメッセージを贈ります。
「今日おうちに帰ったら、スマホが刃物と同じ凶器と化す前に、あなたがその凶器を振り回す危険人物と化す前に、真っ先にスマホをお捨てなさい」