つい先日のことです。私は「パーマをかけたい」というある生徒(Aさん)と話をしました。聞けば「パーマをかけて格好良くなりたい。板三中の校則は『Be Gentleman(紳士であれ)』だけだから、許されるか」ということを確認したいとのことでした。
結論から言うと、私は「許す・許さない」ではなく「反対」しました。そして、その根拠として、校則に付記されている『誰もが快適な学校生活を送るための心構え【あじみこし】』の【み=身だしなみ】を引き合いに出しました。そこには「安心・安全を最優先した身だしなみをしましょう」とあるからです。
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パーマをかけたい、髪の色を染めたいという中高生は、少なからずいるでしょう。しかし、パーマ液やヘアカラーリング剤には、体に害を及ぼす成分や毒性の強い成分も含まれています。
例えば平成27年、国民の安心・安全な消費生活を監督する消費者庁が、ある意見書でヘアカラーリング剤に含まれる化学成分の危険性を取り上げていました。以下、概要を紹介します。
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【ヘアカラーリング剤で使用されている酸化染毛剤は、アレルギーを引き起こしやすい】【アレルギー性接触皮膚炎は、日常生活に支障を来すほど重篤化することがある】【それまで異常がなくても、継続的に毛染めを行ううちにアレルギーを引き起こすことがある】【アレルギー症状は次第に重くなり、全身症状を呈することもある】
そして、中学生である皆さんに最も知っておいてほしいのは次の意見です。
【低年齢のうちに毛染めを始めると、アレルギーになる危険(リスク)が高まる】
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私は、Aさんに反対の根拠として「3つの危険」を挙げました。
1つは、今述べたような化学成分が、パーマ液の中にも含まれている危険です。皆さんは今、成長期です。成長期ということは、体が未発達ということでもあります。そして、未発達の体は毒性への抵抗力が弱く、悪影響も受けやすいのです。法律でタバコやお酒を未成年に禁じているのも、それと同じ理由です。
次に、良いか悪いかは別として、現在の日本の社会通念は、中高生のパーマや毛染めに否定的だということです。社会通念とは、一般的な見解とか常識といった意味です。そのためパーマや毛染めをしていると、高校入試や就職面接で不利になる危険があります。
また、中高生を外見で判断し、犯罪に巻き込もうとする「悪い大人」の存在も、現実的な危険です。
そして、もう一つは、皆さんが外見にとらわれ、内面磨きをおろそかにしてしまう危険です。先ほど成長期の話をしましたが、皆さんが成長しているのは体だけではありません。心も成長期にあるのです。
だからこそ、皆さんは今、知性を養い、教養を蓄え、人間性を育むことに、時間とエネルギーを使わなければならないのです。外見を飾ることに気を奪われていると、磨くべき時期に内面を磨けない危険があります。
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以上の根拠をもとに、私はAさんに「校則だから禁止」ではなく「危険だから反対」という立場で話をしました。Aさんも納得し「パーマはかけない」と約束してくれました。
ちなみに私は、金属アレルギーの危険があるピアスを中学生が装着することも、毛染めと同じ3つの根拠から反対の立場です。
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その行為に潜む危険を考えられない生徒が、ある日突然、髪を染めたりピアスを着けたりして登校してくる。教師は教師で「校則違反」を金科玉条に、髪を黒く染め直しピアスを外すまで、生徒を教室に入れない指導を繰り返す…。そんな学校に比べ、危険を冒す前に生徒と教師(しかも校長)が話し合い、事前に危険を回避できる板三中を、私は健全だと思います。
ただし、一つだけ言っておきます。もし皆さんの中に「校則が『Be Gentleman(紳士であれ)』の1つだから、何をやってもいい」と考えている人がいたら、そんな人を Gentleman(紳士)とは呼べません。
したがって、そう考えること自体、すでに本校では明白な校則違反なのですよ。