1週間前の卒業式では、7・8年生の皆さんの協力もあって、温かい雰囲気で9年生を送ることができました。その9年生の分も込めて、改めてお礼を言います。どうも有り難う。
私はよく先生方に「0→1(ゼロイチ)の難しさ」といった話をします。「ゼロイチ」とは文字どおり、0(ゼロ)から1(イチ)を生み出すことです。言うまでもなく「1」は、最小の正の整数です。
きわめて小さな数字と言えますが、たとえどんな小さなものであっても、何もないゼロの状態から生み出すためには大変な時間と労力を要するものです。逆に最初の1さえ生み出せば、それを2や3、4、5……10などに増やす見通しは立てやすくなります。
今回の卒業式は『答辞』を『立志の言葉』に変更したことで、言葉の紡ぎ方や式の隊形なども大きく変えました。それは、板三中卒業式の新たな歴史の始まりであり、まさに卒業式の「ゼロイチ」だったと思っています。
それができたのも、生徒の皆さんと先生方が力を合わせて「前例踏襲」と「慣例慣行」を打破してきたからです。
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ここでKMT(校長ミーニングタイム)です。「前例踏襲」は「前々からやっていることに倣って、そのまま受け継ぐこと」という意味です。「慣例慣行」も少し似ていますが、こちらには「ずっと続けてきていて、きまりのようになっていること」といった意味があります。
学校も含め現代社会の多くの組織に、実は非合理的であるにもかかわらず、それを変えようとせず続けている前例があります。実は時代に合わなくなっているにもかかわらず、脈々と受け継いでいる慣例もたくさんあります。
そして、多くの場合それらに共通している「変えない理由」は、「今までがそうだったから」です。前例踏襲主義や慣例慣行主義の弊害の、最たるものでしょう。
8年生は覚えているかもしれませんが、例年、修了式で紹介している言葉があります。NHKサイエンス番組のタイトルにもなっているイギリスの生物学者・ダーウィンという人の言葉です。
9年生理科の教科書『生物の多様性と進化』という単元に出てくるダーウィンは、次の言葉を残しています。
【最も強い者や、最も賢い者が生き残れるのではない。 唯一生き残れるのは、変化できる者だけである。】
地球の歴史上最強の生物である恐竜は、気候の変動に適応できずに滅びました。霊長(最も優れた生物)を自負する人類も、今までの価値観を改め、自ら招いた環境悪化への対応を変えなければ、恐竜と同じ運命をたどるでしょう。
同じことが、企業や学校などの組織だけでなく、その構成員である私たちにも言えます。さすがに恐竜のように絶滅はしませんが、私たちも前例にとらわれて変化のきっかけをつかみ損ねると、自分を向上させるチャンスも失うのです。
では、人が変わるきっかけには、何があるでしょう? それは、人や書物との出会いかもしれません。あるいは、1つの成功体験や、逆に失敗体験かもしれません。進級や進学、就職や転勤など、自分の置かれる環境が変わることも、自分を変えるきっかけになり得ます。
そう考えると私たちは今、変化のチャンスを迎えているのです。
そのチャンスを前に、過去の自分を「前例・慣例」にし、現状に甘んじていてはいけません。この1年間を省みて、それが生活習慣であれ学習習慣であれ、変えるべき点・改めるべき点は1度0(ゼロ)にリセットしてください。
その後新たな1を生み出すには、はじめに述べたように苦労を伴うかもしれません。しかし、時はまさに春。躍動感にあふれ、環境も変わる今こそ、新たな自分に変化するための「0→1(ゼロイチ)」への挑戦を始めましょう。
【最も強い者や、最も賢い者が生き残れるのではない。 唯一生き残れるのは、変化できる者だけである。】