例年2学期の終業式には、3つの曲を3年サイクルで聴いてもらっています。今年は、元ビートルズ、ジョン・レノンの『 Imagine(イマジン)』という曲を聴いてください。曲名の『Imagine』には「想像する」という意味があります。
国境のない世界、争いごとのない世界を想像することによって、世界を変えようと訴えた曲です。発表され半世紀以上たちますが、今なお反戦・平和を象徴する曲として、多くの国で多くの人々に歌い継がれています。
では、この校長通信4面の歌詞を見ながら聴いてみましょう。
(歌詞を見ながらCDを聴いてもらいました)
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『 Imagine 』は、1971年に発売された時とは別に、世界的に再注目されリバイバル・ヒットした時が2回あります。
1回は9年後の1980年12月8日、ジョン・レノンが熱狂的なファンに拳銃で撃たれ、暗殺という不幸な形で亡くなった時、もう1回は30年後の2001年、9・11アメリカ同時多発テロの直後です。
罪なき人が理不尽に命を奪われた時、人は改めてこの曲の持つメッセージ…つまり、1人でも多くの人が平和を想像し願うことで、争いのない世界を実現したいという思いに駆られるのかもしれません。
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さて、カタールで開催されていたサッカー W杯 が閉幕しました。それと同時に、私は8年後のW杯を想像しています。…と言うと、次のW杯は4年後では?と思ったに違いありません。そのとおり、次回W杯は4年後の2026年、アメリカ・カナダ・メキシコの3カ国共催で開かれます。
一方、私が想像している8年後=2030年のW杯は、まだ開催地すら決定していません。現在、いくつかの国が立候補の名乗りを上げている段階です。その中の1つ、W杯共同開催を目指しているスペインとポルトガルのサッカー連盟が、さる10月に新たな招致方針を発表しました。
それは、開催候補地にウクライナも加えるという共催案でした。発表によると、ロシアとの戦争で傷ついたウクライナに、連帯と希望のメッセージを送るとともに、復興支援の願いを込めた提案だそうです。
ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、明日でちょうど10ヶ月となります。報道は、侵攻半年後の8月末時点で子どもの犠牲者が360人を超え、大半はミサイル攻撃等によるものと伝えていました。
その数は今も増え続け、さらに電力施設への攻撃・破壊が続く中で冬を迎えた今後は、ミサイルだけでなく厳しい寒さとの闘いが、子どもたちを待ち構えています。
Imagine(想像してごらん)。
今から8年後、そのウクライナで、サッカーW杯が華々しく開催される光景を。世界各国から自国のユニフォームを着たサポーターが集まり、競技場が割れんばかりの歓声や歌声に包まれる光景を…。
現実的に可能性は、低いかもしれません。それでも私は、想像することはやめたくないのです。想像すらしなくなるということは、完全に諦めるということです。完全に諦めた瞬間、実現の可能性はゼロになります。逆に言うと、諦めさえしなければ、1%の可能性はあるのです。
そして、『 Imagine 』の歌詞にあったように、たとえdreamer(夢想家)でも同じ願いを持つ人が増えれば、実現の可能性は2%、3%…と膨らんでいくと、私は信じます。
今年最後の講話の結びに、想像することの大切さ、想像力が秘めた可能性を表す言葉を紹介して、私の話を終わります。その言葉は『海底2万里』などのSF小説で知られるフランスの小説家、ジュール・ヴェルヌの言葉です。
【人が想像できることは、人が必ず実現できる】
願わくは、8年後といわず、間もなくやってくる新しい年に、1日も早くウクライナで砲弾の音がやむことを…。子どもたちが戦争の恐怖から解放され、1日も早く笑顔を取り戻せることを…。
どうぞよい年を迎えてください。