2000年代半ばに流行った流行語に【KY(ケーワイ)】がありました。Kは「空気」、Yは「読めない」の頭文字で、2つあわせて「空気が読めない」を表す略語になります。
ここでいう「空気」とは、その場の雰囲気といった意味です。それが「読めない」のですから、【KY】は「雰囲気にあわせられない」「周囲に斟酌できない(周囲の気持ちをくみ取れない)」というのと、同義といえるでしょう。
実は私が校長になった頃、激励会を開いてくれたかつての上司(後に東京都副知事まで務めた方で、教育関係者ではありません)に、こう言われたことがあります。
「あなたはKYもKY、KYの2乗ですからねぇ」
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【KY】どころか【KY × KY = KY²】? 私って、どれだけ空気が読めないの…? しかし、そう言っていた時の上司の目が温かく笑っていたことで、私はそれをネガティブ評価とは解釈しませんでした。
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「空気が読めない」ということを「協調性がない」「デリカシー(配慮)に欠ける」と解釈すれば、それは批判されても仕方ないでしょう。社会生活を営む上では「空気を読む」ことも、必要な処世術の一つと言えます。
一方で「空気を読みすぎる」のも、良いことだとは思えません。それは「周囲に迎合しているだけ(調子をあわせているだけ)」「人の顔色をうかがっているだけ」ということでもあり、場合によっては「主体性がない」ことにもつながるからです。
「周りに流されず、自分で自分のとるべき行動を決め、その結果に責任をもつ」つまり「主体性をもつ」ためには、あえて「空気を読まない」ことも大切だと考えます。だから、私はかつての上司から【KY²(KY2乗)】と評された時も、それを「校長として主体性をもて」という叱咤激励と解釈したのです。
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私がそんなことを思い出したのは、MLBの大谷翔平選手が、今シーズンのMVP(最優秀選手)に選ばれたことがきっかけです。さらに付け加えると、その快挙を伝えるニュースで「イチロー選手以来、日本人としては20年ぶり」と報じていたからです。私はお2人に、MVP以外の共通点を見出しています。
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イチロー選手がMLBに挑戦する前、日本人メジャーリーガーとして成功を収めたのは、野茂英雄さんや佐々木主浩さんなど全員が投手でした。そのため、当時の多くの評論家は「投手は変化球で勝負できるので日本人でも通用するが、力勝負が求められる打者では成功しない」といった論調だったのです。しかし、それを覆すその後のイチロー選手の活躍は、今さら言うまでもないでしょう。
大谷選手が、いわゆる二刀流(投手と打者)でMLBへの挑戦を宣言した時も、批判はしないまでも「どちらかに専念するべき」という声が圧倒的でした。今、それを声高に主張する人はいません。
すなわち、私がお2人に見る共通点は、自分の挑戦に否定的な空気の中で信念を貫き、空気を変えたという点なのです。
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繰り返しますが、社会生活を営む上で「空気を読む」ことも必要です。ただし、間違った空気に同調したり、自分の信念に反する空気に迎合したりしてはいけません。
例えば、いじめやSNS上の誹謗中傷が、多数派・主流派の醸す空気として感じられたとします(けっして多数でも主流でもないのですが)。空気は、あなたをその中に取り込もうとするかもしれません。
しかし、そんな同調圧力には絶対に屈しないでください。圧力が強ければ、とりあえず【KY(空気が読めない)】を装うだけで構いません。ただし、いつかは【KY²(KY2乗)】の気概で、そのような空気を場外までかっ飛ばしてもらいたいと思います。
この場合の【KY²】の意味です。
【KY×KY=空気なんか読むな、変えてやれ】