卒業式「校長式辞」
- 公開日
- 2021/03/25
- 更新日
- 2021/03/25
校長通信
今日、無事に卒業式を終えることができました。
子どもたちは本当に立派で、最高にステキな卒業式でした。
校長式辞は、大型モニターを使ってプレゼンテーションをしながら、図工・理科・算数の授業をしました。
以下は、基になった原稿です。
ただ、原稿を読んだわけではないので、この通りではありませんが、概ね、話の展開はこの通りです。
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九十六名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
本来であれば、多数のご来賓の皆様をお招きし、第一四三回卒業式を挙行いたしますところ、かような卒業式となりましたことを残念に思います。
しかし、新たな生活スタイルの始まりと前向きにとらえ、今日は校長先生が最後の授業をいたします。
さて、皆さんはこの色は何色だと思いますか?
右は「黒」、左は「白」に見える人は手を挙げてください。
そうですね。確かに右は「黒」、左は「白」に見えるかと思います。
では、これはどうでしょうか?
左の色は、やはり「白」ですか?
右の色と比べて「白」とは言えないと思う人は手を挙げてください。
「白」ではないと思った人は白っぽいグレーと呼ぶのかもしれません。
つまり、初めは「白」だと思った色も、他の条件が付くと違った色に見えるし、実際、「白」と言っても様々な「白」があるのです。「白」はひとつではありません。
では、この質問はどうでしょう。
校長先生は男性である。○か×で答えてください。
○…先生は男性だと思う人
×…先生は女性だと思う人
そうです。校長先生は生物学的に言えば「男性」です。
みなさんは生まれてくるときに、父親と母親から、それぞれ違う遺伝子をもらってきます。
染色体という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
男性はX染色体とY染色体という2種類の染色体を持っています。一方、女性はX染色体をふたつ持っています。
赤ちゃんは父親からX染色体を、母親からX染色体をもらうと、その赤ちゃんはX染色体を2つもっているので、女の子として生まれてきます。
また、父親からY染色体を、母親からX染色体をもらうと、その赤ちゃんは、男性として生まれてくるのです。
と、今までは考えられてきました。
ところが、科学が発達して、実はX染色体をふたつ、Y染色体をひとつ持っている赤ちゃんや、Y染色体の中にX染色体の遺伝子が混じっている赤ちゃんなど、多種多様な組合せがあることが分かってきました。
LGBTとか性同一性障害といった言葉を聞いたことがあるはずです。
つまり、人の性別は必ずしも男性・女性の2種類だけではなく、女性の要素を持った男性と、男性の要素を持った女性など、様々な性別があると分かってきたのです。LGBTや性同一性障害は、むしろ生物学では当たり前のことだと言えます。
ところで、算数では「1+1が2」であることはまちがいありません。1っぽい2とか、2っぽい1とか、あるはずがないのです。
では、この式を見てください。
1÷3=0.33333 ですね。割り切れないので3が無限に続きます。
分数で表すと
1÷3=1/3 です。
さて、1/3を3倍するといくつでしょう。答えは 1/3×3=1 です。
おなじように0.33333を3倍すると、0.99999 となって、9が無限に続きます。
ふたつの式から
1=0.99999・・・となります。
どうですか。0.9999と9が無限に続いたとしたら、それは本当に「1」になるのでしょうか。ならないですね。
今まで算数では、曖昧な答えはないと考えていたはずです。しかし、必ずしもそうでないことが分かったはずです。
種明かしをすると、数学の世界では1=0.99999・・・なのです。そうしないと、式が成り立たないからです。でも、感覚的には不思議な話ですね。
では、今日の学習を振り返ります。
世の中の様々なことは、実は白や黒、○や×のように、はっきりと答えが決まっていないことが多く、今まで正解だと思い込んでいたことが、必ずしも正しくないこともあるのです。
ですから、皆さんが成長していく中で、「自分はもうダメだ」と簡単に決めないでください。見方や考え方を変えれば、チャンスは、まだまだたくさんあるはずなのです。
また、「この人とは相性が悪い」と簡単に遠ざけないでください。実は大切な友人になる人なのかもしれません。見方を変えれば、あなたの気付かなかった、その人の良さが見えてくるはずです。
このように、どうか柔らかい心を持ち続けて、すてきな大人になってください。
保護者の皆様、本日は、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。
卒業された後も、子どもたちも保護者の皆様も、板橋第一小学校の家族です。困ったことがあったときや、嬉しいことがあったときは、いつでもご来校ください。お待ちしております。
ご卒業おめでとうございます。
令和三年三月二十五日
東京都板橋区立板橋第一小学校
校長 湯 澤 斉 之