先月、国連食糧農業機関(FAO)は、イスラエルとの紛争が続くパレスチナ・ガザ地区で、食料供給システムが完全に崩壊し、180万人以上の人々が「非常に深刻な飢餓状態」にあると伝えていました。
念のためKMT(校長ミーニングタイム)で確認すると、飢餓とは「生存に必要な栄養が取れない状態」といった意味です。
同じくFAOは7月に「世界の食料安全保障と栄養の現状」という報告書を発表しました。それによると、2023年の世界で飢餓に直面した人の数は、約7億3300万人にのぼるとのことでした。
これは、全世界人口の約9%にあたり、地域別でアフリカだけに限ってみると約20%、つまり5人に1人が飢餓に苦しんでいるのだそうです。その原因としては、ガザ地区と同じような紛争だけでなく、貧困や自然災害・気候変動なども挙げられています。
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さまざまな教科の授業で取り上げていますが、2015年の国連総会で採択され、2030年までの達成を目指す17の目標(世界の約束)をSDGs(持続可能な開発目標)といいます。
その中の1つに「ゼロ・ハンガー(飢餓をゼロに)」という目標もありました。あえて「ありました」と過去形を用いたのは、採択から9年以上たち、目標達成の期限まで5年あまりとなった現時点で、すでにこの目標は達成困難との見方が示されているからです。
さて、8・9年生の皆さんは覚えているかもしれませんが、例年2学期の終業式では、皆さんに英語の曲を聴いてもらっています。今年は『Do They Know It’s Christmas ?』(ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?)という曲を聴いてもらいます。曲名は「彼らは、今日がクリスマスだということを知っているのだろうか?」という意味です。
この曲は、1984年、約100万人が飢饉で死亡したアフリカ・エチオピアの食料不足を救済するためのチャリティーソングとして作られ、ワム!のジョージ・マイケル、カルチャークラブのボーイ・ジョージといった、当時のイギリスのトップミュージシャンたちによって歌われました。
余談ですが翌年、この曲の影響を受けたマイケル・ジャクソンやスティーヴィー・ワンダーなどアメリカのミュージシャンたちが、やはりアフリカの飢饉を救うために歌ったのが、有名な『We Are The World 』(ウィ・アー・ザ・ワールド)です。
では、この通信の2面に載せた歌詞や動画も参照しながら『Do They Know It’s Christmas ?』を聴いてみてください。
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(曲を聴いてもらいました)
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日本でも、宗教に関係なくクリスマスを祝う習慣は、すっかり定着しました。物価高ではあるものの、今年も多くの人がちょっとしたご馳走やケーキを食べながら、楽しく語らうことでしょう。一方で世界には、食事が「楽しむもの・味わうもの」ではなく「生き延びるためのもの」という人たちもいます。
それは、ガザ地区やアフリカ地域に限ったことではありません。今こうしている間にも世界には、ご馳走やケーキはおろか、たったひと切れのパンがなかったばかりに、栄養失調で命を落とす子どもたちがいるのです。
FAOの事務局長は今月、人道支援会議の席上、世界に向けこう訴えました。
「支援すべきは、まさに今この瞬間であり、明日ではない」
同じ地球上の同じ日に、きらびやかなイルミネーションの下、笑顔で食卓を囲む人がいる一方、わずかな食物で飢えをしのぎ、生きて明日を迎えられることを夜空の星に祈っている人がいます。
ゼロ・ハンガー(飢餓をゼロに)
残念ながら現在の国際社会は、その約束を果たすドラスティックな(思い切った)方策を打ち出せずにいます。では、私たちは全く無力なのでしょうか。いえ、私たちは微力であっても、けっして無力ではありません。どんなに小さくても、一人ひとりにできる手立てはきっとあるはずです。
例えば、まだ食べられる食べ物を捨てる「食品ロス」を減らすのも、その一つです。統計によると、現在日本では全国民が、毎日お茶碗一杯分の食料を捨てている計算になるそうです。それらの食品ロスを減少させることは、食糧資源の有効活用や、飢餓に苦しむ国への支援強化につながるでしょう。
また、地理や家庭科、9年生の英語の教科書では「フェアトレード」を取り上げています。途上国の製品を、適正な価格で購入する貿易のしくみのことです。私たちが日常の買い物で、そのフェアトレード認証商品の購入を心がけることも、途上国の暮らしの改善や貧困の解消に役立つはずです。
クリスマスを迎えお正月を控えた今、皆さんも考えてください。
誰1人取り残さず、全ての子どもたちが笑顔で「メリー・クリスマス」「ハッピー・ニュー・イヤー」と言える世界にするため、そして「世界の約束」を守るため、自分に何ができるのかを。
どうぞ良い年を迎えてください。