11月朝礼 校長講話
生徒の皆さん、おはようございます。だいぶ肌寒くなってきましたね。10月の朝礼のころは、まだ暑い日も多かったのを思い出します。秋が短く、冬がすぐそこまで来ているように感じます。
この1か月も、皆さんがさまざまな場面で活躍する姿を見聞きしました。生徒総会、修学旅行や職場体験、文化発表会。区の行事では、板橋音楽祭、演劇発表会、平和のつどいに参加しました。また、舟渡町会の大運動会やチューリップの植栽など、地域のボランティア活動に参加してくれた人もいました。本当によく頑張っています。とても嬉しく思います。
さて、今日は今週の土曜日から始まる「東京2025デフリンピック」についてお話しします。
デフリンピックとは、英語で「耳がきこえない」という意味の Deaf とオリンピックを組み合わせた言葉で、「聞こえない・聞こえにくい人のためのオリンピック」です。1924年に初めて開催され、今年でちょうど100周年を迎えます。当初は「国際サイレント大会」と呼ばれ、2001年から現在の名称になりました。実は、パラリンピックよりも古い、世界で最も長い歴史をもつ障がい者のスポーツ大会なのです。
パラリンピックは、肢体不自由や視覚障がいのある選手、また陸上・水泳・卓球などでは知的障がいのある選手も出場します。しかし、聴覚障がいのある選手は音を使わない特別なルールのもとで競技を行うため、デフリンピックとして独立しています。
たとえば陸上競技では、通常ピストルの音でスタートしますが、デフリンピックでは光のランプや旗の合図でスタートします。これを「サイレントスタート」といいます。サッカーやバスケットボールでは声での指示が使えないため、選手たちはアイコンタクトや手話、身ぶりなど「目で伝えるコミュニケーション」を使って連携します。一瞬の視線や手の動きだけで意思を伝え合うには、強い信頼とチームワークが欠かせません。
「音のない世界で、どうやって気持ちを伝え合うのだろう?」
そう考えると、私たちが普段どれほど「言葉で伝えること」に頼っているかに気づかされます。家族や友だちと話すときに、スマートフォンを見ながら会話していることはありませんか。相手の表情を見ずに話していると、大切な気持ちのサインを見逃してしまうこともあります。
本当に大切なコミュニケーションは、言葉の前に「相手をよく見ること」や「人の気持ちを想像すること」から始まります。
デフリンピックは、単なるスポーツ大会ではなく、多様性や思いやりを学ぶ大切な機会です。私たちの周りにも、さまざまな違いをもつ人たちがいて、それぞれが工夫しながら自分の力を発揮しています。
ちょうど今月は「ふれあい月間」、そして11月21日からは「いじめ撲滅週間」も始まります。デフリンピックをきっかけに、身のまわりの人に改めて目を向け、相手を思いやる心を大切にしてください。
デフリンピックの各競技は、事前申し込みが不要で、誰でも無料で観戦できます。興味のある人は、日程や会場を調べて足を運んでみてください。9年生は7月に手話講座を受けましたが、デフリンピックでは日本の手話とは異なる「国際手話」が使われます。また、声援が届かない代わりに、目で伝える応援「サインエール」というものもあるそうです。 (実演)
音のない世界で全力を尽くすアスリートたちに拍手を送りながら、その姿から「人とつながる力」を学んでいきましょう。