令和2年度の修了式を迎えました。コロナ禍により約2ヶ月に及ぶ臨時休校で始まった今年度は、前例のない学校生活を送った1年だったと言えるでしょう。
そのため皆さんにも多くの我慢と不自由を強いることになり、申し訳なく思っています。この場を借りてお詫びするとともに、そんな学校生活にあっても「東京で一番」を目指し、様々な取り組みを行った皆さんと先生方に敬意を表します。
先ほど私は「前例がない」という表現をしました。その「前例」という言葉を使った四字熟語に「前例踏襲」があります。「前々からやっていることに倣って、そのまま受け継ぐこと」といった意味です。
また、同じような四字熟語で「慣例慣行」というのもあります。「ずっと続けてきていて、きまりのようになっていること」という意味です。さらに四字熟語繋がりで挙げれば「現状維持(現在の状態を変えずに保つこと)」も、用途は違いますが似ているかもしれません。
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学校も含め現代社会の多くの組織には、実は非合理的であるにもかかわらず、実は時代にそぐわなくなっているにもかかわらず、それでも脈々と受け継ぎ、続けていることがたくさんあります。
そして、多くの場合それらに共通している「続ける理由」は、「今までがそうだったから」です。前例踏襲主義や慣例慣行主義の弊害の、最たるものでしょう。
板三中が前例のない1年間を乗り切れたのは、皆さんと先生方が変化を恐れず、前例にとらわれない発想で、様々な取り組みに挑んできたからです。
8年生は覚えているかもしれませんが、例年、その年度の修了式で紹介している言葉があります。
NHKサイエンス番組のタイトルにもなっているイギリスの生物学者・ダーウィンという人の言葉です。8年生の理科の教科書『生物の変遷と進化』という単元にも出てくるダーウィンの次の言葉を、改めて紹介します。
【最も強い者や、最も賢い者が生き残れるのではない。唯一生き残ることができるのは、変化できる者だけである。】
地球の歴史上最強の生物である恐竜は、気候の変化に適応できずに滅びました。霊長(最も優れた生物)を自負する人類も、今までの価値観を改め、自ら招いた環境悪化への対応を変えなければ、恐竜と同じ運命をたどるでしょう。
同じことが、学校などの組織だけでなく、その構成員である私たちにも言えます。さすがに恐竜のように絶滅はしませんが、私たちも前例にとらわれて変化のきっかけをつかみ損ねると、自分を向上させるチャンスも失うのです。
では、人が変わるきっかけには、何があるでしょう? それは、人や書物との出会いかもしれません。あるいは、一つの成功体験や、逆に失敗体験かもしれません。進級や進学、就職や転勤など、自分の置かれる環境が変わることも、自分を変えるきっかけになり得ます。
また、社会全体が変わらざるを得ない状況をつくりだした現在のコロナ禍も、結果として「変化のきっかけ」になっています。そう考えると私たちは今、自己変革のチャンスを迎えているのです。
そのチャンスを前に、過去の自分を「前例・慣例」にし、「現状」に甘んじていてはいけません。この1年間を省みて、学習・生活の両面で自分に足りなかった点を挙げてみてください。そして、それを改めるための具体的な行動計画を立て、確実に実行しましょう。
時は、まさに春。
今こそ「前例踏襲」「慣例慣行」「現状維持」を脱する「3脱」の、絶好のチャンスが到来しています。
【最も強い者や、最も賢い者が生き残れるのではない。唯一生き残ることができるのは、変化できる者だけである。】