毎年恒例になっている「流行語大賞」で、今年はプロ野球阪神タイガースの岡田監督が、優勝を意味する隠語として使った【アレ】が選ばれました。
ただ、流行語に選ぶ気など毛頭ありませんが、この1年間私は【アレ】以上に接する機会が多く、【アレ】以上に心に残った言葉があります。それは【人道】です。「人道支援」「人道回廊」「人道的停戦」「国際人道法」「人道に対する罪」「人道危機」…。
詳しくは知らないまでも、皆さんも10月に始まったパレスチナ・ガザ地区でのイスラエルとハマスの大規模戦闘や、昨年来続いているロシアのウクライナ侵攻のニュースで、何回か聞いた言葉ではないでしょうか。
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【人道】とは「人の踏み行うべき道」(広辞苑)という意味です。
前回の朝礼で太平洋戦争を取り上げた際もお話ししたように、戦争によって傷つくのは必ずしも兵士とは限りません。むしろ無力で何の罪もない子どもを含む多くの民間人が、何の抵抗もできないままに傷つき、命を落としているのです。
そんな人々への支援が「人道支援」であり、彼らを戦地から逃がすための避難路が「人道回廊」であり、彼らのために一時的に戦闘をやめるのが「人道的停戦」です。
そして、それらも含め、いかに戦争中といえども人として踏み行うべき道を定めた約束事を「国際人道法」といい、現状はそれが守られていない「人道危機」にあり、それは「人道に対する罪」に問われなければならないのです。
言うまでもなく、今日はクリスマスです。
ただし、ウクライナやパレスチナに限らず世界には、サンタクロースに願うプレゼントが「戦争の終わり」であるという子どもたちがいます。戦火におびえながら、教会の鐘の音の代わりに聞こえてくる砲弾の音に、耳をふさいでいる子どもたちもいます。
さて、毎年2学期の終業式では、3つの曲を3年サイクルで聴いてもらい、その曲に込められたメッセージについて考えてもらっています。
3年サイクルですから、皆さんは中学校で1回ずつその曲を聴くことになります。しかし、今年は例外的に順番を入れ替え、2年前の曲を使わせてもらいます。
したがって、9年生の皆さんは覚えているかもしれませんが、今年は、元ビートルズのジョン・レノンという人の『 Happy Xmas 』という曲を聴いてください。
♪♪♪ 校長通信の歌詞カードを見ながらMVを視聴しました ♪♪♪
歌詞を見てわかったかと思いますが、この曲の投げかけるメッセージはいたって明快です。
War is over,if you want it.War is over now … (戦争は終わるよ、もし君がそれを望むなら。戦争は終わるよ、今すぐに)
一方、明快でわかりやすいだけに「そんなに簡単に戦争は終わらない」という感想を抱いた人もいると思います。確かにその通りです。現実問題として、現在世界各地で起きている戦争や紛争を、そう簡単に終わらせることはできないでしょう。
ただ、それでも1つ言えるのは、希望は捨ててはいけないということです。実現を諦め、願うことさえやめた時、希望は絶望へと変わります。
9年生の国語の教科書に載っている『故郷』という小説は、最後を次のように締めくくっています。
【希望とは、もともとあるものともいえぬし、ないものともいえない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ】
今年、私はこの小説でいう道が【人道】という名の道と重なって思えました。「人の踏み行うべき道」が【人道】なら、1人でも多くの人がそれを願い、そこを歩くことで【人道】が拓かれるのではないか…」そんなことを思いつつ、今年最後のお話を終わります。
どうか良い年を迎えてください。