先日、8年生が国語の授業で古文『徒然草』を学習していました。詳しい説明は省きますが、鎌倉時代末期に兼好法師という人が書いた随筆です。
その『徒然草』に「高名の木登り」という段があります。教科書には出ていないものの、資料集に載っています。何より皆さんはChromebookを持っているので、時間のあるときに検索してください。
内容を簡単にいうと、「木登りの名人」と呼ばれる人がいました。その名人が、弟子に指図して高い木の剪定(木の枝などを切り落とすこと)をさせていた時のことです。高く危険な場所での作業中、名人は何も言わず黙って見ているだけでした。
しかし、弟子が剪定を終えて低い場所まで降りてきた時、名人は初めて「気をつけて降りろ」と声をかけたのです。不思議に思った弟子は「なぜ、ここまで降りてから、そのように言うのか?」と尋ねました。すると、名人はこう答えたのでした。
【あやまちは、やすき所になりて、必ず仕ることに候ふ】
(失敗は、もう大丈夫だと思ったときに、必ずしでかすものです)
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高く危険な場所で作業している時は、誰でも用心して慎重になる。だから、わざわざ注意を促す必要もない。一方、安心して緊張の糸が緩んだ時にこそ失敗するので、注意しなければならない…。
そんな名人の教えを伝える話です。
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さて、おそらく8・9年生も忘れていると思いますが、約1年前の全校朝礼で私は、感染症対策への気の緩みに警鐘を鳴らす(危険を知らせる)話をしました。
当時は、夏に拡大したコロナ感染の第2波が収まりつつありました。そして、学校生活も含め社会全体が、コロナ流行前の日常を取り戻そうという空気に満ちていたのです。そうした状況下にあって、あえて私は講話の中で、新型コロナ対応・民間臨時調査会の報告書から、次の一節を引用しました。
【同じ危機は、二度と同じようには起きない。しかし、形を変えて、危機は必ずまたやってくる。学ぶことを学ぶ責任が、私たちにはある。】
その後、冬を迎えて第3波、今年春になって第4波、さらに最悪の感染拡大となったこの夏の第5波と、調査会の予言が的中してしまったことは、今さら言うまでもないでしょう。
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9月末をもって、緊急事態宣言が解除されました。爆発的に感染者数が増加した夏の第5波が、秋の訪れとともに急激に減少したからです。その要因として「ワクチン接種が進んだ効果」や「人々の行動自粛」などが挙げられていますが、多くの専門家が決定的な要因は「不明」としています。
感染の収まりつつある要因がわからないということは、いつまた、何をきっかけに感染が拡大するかもわからないということです。だからこそ私たちは、先の「高名の木登り」の教訓を心に留め置くべきではないでしょうか。
緊急事態宣言が解除され、これまで「やってはいけない」とされていた活動が「やってもよい」へと切り替わりました。ただし、全ての「やってもよい」の前には「感染症対策を徹底したうえで」という条件があることを忘れてはいけません。
これからも板三中の学びを止めないために、形を変えて必ずやってくるであろう第6波に備えてください。それは、難しいことではありません。マスクの着用(外した際の発話禁止)、3密の回避、手洗いや消毒の励行など、今までと同じことを、同じ緊張感をもって実行してくれればよいのです。
【あやまちは、やすき所になりて、必ず仕ることに候ふ】
(失敗は、もう大丈夫だと思ったときに、必ずしでかすものです)