本日は、皆さんの語彙力を高めるKMT(校長ミーニング・タイム)を兼ねたお話をさせてください。
まず最初のKMTです。最近は、暖かい日が続いたかと思えば、また真冬のような寒さが戻ったりもしています。このような寒暖の周期を【三寒四温】といいます。
本来は「冬に寒い日が3日ほど続いた後で、比較的暖かい日が4日ぐらい続く」という意味ですが、「寒い日と暖かい日を繰り返しながら、少しずつ春になっていく」という前向きな意味でも用いられます。
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次のKMTです。【禍福はあざなえる縄のごとし】という言葉があります。【禍福】は、不幸と幸福のことです。【あざなう(糾う)】とは、ここでは2本の藁をより合わせるという意味です。
2本の藁をより合わせて作った1本の縄のように、幸福と不幸は交互にやってくるという意味です。ただ、これも前向きに捉えて「悪いことがあれば、必ず良いこともある」という用法でも使われます。
最後のKMTは【塞翁が馬】です。これは、国語の故事成語の授業で学習したかもしれません。
昔の中国の話で、塞翁(塞=とりでの近くに住んでいた老人)が、飼っていた馬を逃がしてしまいます。塞翁は残念がりましたが、なんと数ヶ月後その馬が、別の立派な馬を連れて帰ってきたのです。
後日、塞翁の息子がその馬に乗っていた時、落馬して脚の骨を折ってしまいます。塞翁は心配しました。しかし、その怪我のおかげで息子は戦争に行かずに済み、命が助かったのだそうです。
そんな逸話から「人生の災難と幸運は予測できない」という意味や「災難と思った出来事が、良い出来事に転じる」という前向きな意味で用いられる言葉です。
さて、少し前に9年生が、国語の授業で島崎藤村の詩『初恋』を学習していました。その際お邪魔していたクラスで「校長先生の初恋」を尋ねられ、恥ずかしながら中学3年生時代まで続いた失恋体験を話しました。
それに続ける形で告白すると、私は高校入試で第1志望校に受かりませんでした。失恋と受験失敗が重なり、当時はかなり落ち込んだものです。
しかし、進学した第2志望の高校で、ある異性の同級生と出会います。その彼女とは9年間の交際を経て結婚し、今や子どもだけでなく孫にも恵まれました。彼女のおかげで、人並みに幸福な人生を歩めていると思っています。
さらに告白を続けると、大学卒業前の就職活動では、希望していた業界の企業は全て不採用でした。その時もまた、かなり落ち込みました。やむなく大学卒業後は就職浪人となり、アルバイト生活を送ることになります。
そんな時期に真剣に教員を目指すようになり、3回目の採用試験でやっと合格できました。以来40年近く経ち、今私はこの職業に就いて良かったと、心から思っています。
3月に入り、間もなく学校生活が1つの区切りを迎えます。この1年間を振り返ったとき、自分にとって暖かい日と寒い日のどちらが多かったと感じますか。良かったことと悪かったこと、ラッキーと感じたことと「ついてない」と感じたこと、それぞれどちらが多かったでしょうか。
もしかしたら9年生の中には、3日前の都立高入試の結果で、その答えを逆転させた人もいるかもしれません。
ただし、【禍福はあざなえる縄のごとし】【塞翁が馬】です。たったこの1年の禍福で、あなたの人生の幸・不幸が決まるわけではありません。さらに私は、人生は【三寒四温】でよいと思っています。
3日寒い日があっても、4日暖かい日があればいい。人生トータルで、ちょっとだけ暖かい日の方が多ければ、それで十分。むしろ私は経験上、冬の冷たい風にさらされた人ほど、春の風のぬくもりに気づけると思っています。
本日のKMTが、皆さんの語彙力だけでなく、わずかでも皆さんの「前向きに生きる力」を高めてくれたなら幸いです。