国の文化庁は、毎年「国語に関する世論調査」を行っています。時代や社会情勢の変化に伴い、言葉に対する私たちの意識や、言葉そのものも変わるからです。
調査結果は過去にも、例えば【見れる・食べれる】など「ら抜き言葉」への意識や、【ディスる】【ガチで】など「若者言葉」の認知度がマスコミで取り上げられてきました。
また、【情けは人のためならず】という諺の意味を「人に情けをかけることは、その人を甘やかすことになるので良くない」などと誤解している人が多いというデータも話題になりました。(正しくは『人にかけた情けは、巡り巡って自分に返ってくる』という意味)
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先日、昨年の調査結果が発表されました。では、ここで、調査項目の一部を交えながら、皆さんの語彙力を高めるKMT(校長ミーニングタイム)です。
次の例文の【姑息】の意味は、1・2のどちらでしょうか?
【彼は、よく姑息な手段をつかう】
1「卑怯な」 2「一時しのぎ」
詳しい説明は割愛しますが、世論調査によると正しい意味を知っていた人は、わずか約17%でした(正解は、2番)。
さて、今私は「詳しい説明は割愛します」と言いました。では、次のKMTです。この【割愛する】の意味は、1「不必要なものを切り捨てる」2「惜しいと思うものを手放す」のどちらでしょうか?
こちらも正答率は約24%だったそうです。したがって、もし2問連続で間違えても、あまり悲観しなくて良いでしょう(正解は、2番)。
調査には「次のような言葉を使うか」という質問もありました。皆さんは【 】の言葉を日常的に使いますか?
【なにげに】一人でなにげに呟いた。【半端ない】暑さが半端ない。【ぶっちゃけ】ぶっちゃけ言わせてもらうと…。
国語の授業ではないので、それこそ詳しい説明は割愛しますが、上記3つの言葉はそもそも存在しません。
【なにげに】は「なにげなく」、【半端ない】は「中途半端でない」を語形変化させた若者言葉、【ぶっちゃけ】も「包み隠さずに言う」という意味の「打ち明ける」を「ぶち明ける」→「ぶっちゃける」に語形変化させた若者言葉です(と、私は考えています)。
最初に述べたとおり、言葉は時代や社会情勢により変化します。「言葉は生きもの」と言われる所以です。人を傷つけたり不快にさせたりする言葉は別として、私も若者言葉を全否定しません。
それどころか、例えば程度の甚だしいことを表す【チョー(超)】という接頭語など、そのときの気持ちや状況、様態を端的に伝えやすい若者言葉もあると思っています。ただし、それをフォーマル(正式・公的)な場面で、フォーマルな相手に対して使うとなると、話は別です。
やはり世論調査には「言葉や言葉の使い方に対して、自分自身に課題があると思うか」という質問がありました。それに対し70%近い人が「ある」と回答し、最も多く挙げられた課題が「改まった場で、ふさわしい言葉遣いができない」でした。
繰り返しますが、私は必ずしも若者言葉を否定しません。しかし、例えば【ヤバい】の一言で様々な感情を表現している人(特に大人)を見ると、その人は語彙だけでなく感性も「チョー貧しい」人なのかと思ってしまいます。
本校の校則『Be Gentleman(紳士であれ)』には「時や場所や相手に応じた、美しく温かい言葉遣いをしましょう」という付則があります。それを実践するには、まず正しい言葉の知識を取り入れ、その意味や用法を熟知・習得し、相手の立場や気持ちを考え、相手に伝わるように表現しなければなりません。
基礎学力と同様ジェントルマンの言葉遣いも、そうした日常的な Input(認識)→ Think(思考)→ Output(表現)の訓練があって、初めて身に付けることができるのです。
今日の朝礼はKMTを兼ねましたが、私も自分自身を振り返り、自戒の念を込めて話しました。