さる11月1日、東京都で新たな制度が導入されました。名称を「パートナーシップ制度」といいます。これによりパートナー(お互いを尊重し、協力し合って共に生きていくことを約束した2人)が、様々な行政サービスを受けられるようになりました。
ただ正確に言うと、ここでいうパートナーには「性的マイノリティ(少数派)の」という修飾語が付いてます。
皆さんは「性」には何種類あると思いますか? 男性・女性の2種類? それも正解です。ただし「それも」と言ったのには、理由があります。それは、今皆さんが思い浮かべた性は、あくまでも身体上、つまり、生まれながらの「体の性」に過ぎないからです。
その「体の性」について、保健体育の教科書では「女子・男子の生殖機能」という単元で説明しています。また、理科の教科書(9年生)の「生物の成長と生殖」という単元では、同じことを「雌・雄」という言葉で説明しています。
※ 続きは、下の『おりたたみ記事』をクリックしてください。
校長講話 ここをクリック
実は、性にはそうした「体の性」とは別に「心の性」もあります。「心の性」とは、自分の性をどのように認識するかということです。わかりやすく言うと「自分を男であると思うか、女であると思うか」ということであり、それは「体の性」とは無関係です。
したがって、「体の性」が男でも「心の性」は女という人もいますし、その逆の人もいます。また、自分でも男か女か認識を特定できない、不明瞭な「心の性」もあります。
さらに性は、それだけではありません。「好きになる性」というのもあります。自分にとって恋愛感情の対象となる性のことです。これには「自分と同性を好きになる」「異性を好きになる」「同性・異性の両方を好きになる」という、大きく3通りの性があります。
「体の性」で、【男】【女】の2通り、そこに「心の性」の【男】【女】【不明瞭】の3通りを組み合わせると、2×3=6通りの性があることになります。さらに、そこに「好きになる性」の【同性】【異性】【両性】の3通りを掛け合わせれば、2×3×3=18通りもの性があるのです。
たまたま私は「体の性」と「心の性」が一致していて、「好きになる性」は異性という人間に生まれてきました。おそらく皆さんも含め、そういう「性の組み合わせ」で生まれてきた人がマジョリティ(多数派)だと思います。
ただし、それは「18通りある性」のうちの1つに過ぎません。先ほども言ったように「たまたまそういう性で生まれてきた」だけの話です。
LGBTQという言葉を知っているでしょうか。
Lesbian(レズビアン=女性同性愛の人)Gay(ゲイ=男性同性愛の人)Bisexual(バイセクシュアル=男性・女性の両性愛の人)、Transgender(トランスジェンダー=『体の性』と『心の性』が異なる人)Questioning(クエスチョニング=自分の性の認識が不明瞭な人)の頭文字です。
LGBTQの人も、それ以外の人も「18通りある性」の1つで生まれてきました。18分の1という点では全く同じであり、違いがあるとすれば、マジョリティ(多数派)かマイノリティ(少数派)かの違いだけです。
したがって、単に数の多少を根拠に、マジョリティが自分たちを「普通」、マイノリティを「普通でない」と決めつけるのは、無知な思い上がりです。ましてマイノリティを差別したり侮辱したりするのは、明白な人権侵害になるのです。
保健体育や理科の教科書で「体の性」を取り上げている一方、小さいながら【LGBTなど性的少数者】という言葉が出てくるのが、社会(公民)の教科書です。そのページの単元『等しく生きる権利』から次の一節を紹介して、今日の話を終わります。
【人には平等なあつかいを受ける権利(平等権)があります。日本国憲法は『法の下の平等』を掲げて、すべて国民は、人種、信条、性別、社会的身分などを理由にして差別されないと定めています。】
★ ★ ★ ★ ★
講話後、「性が18通りというのは1つの考え方で、他の考え方もあること」「ただ、それが何通りかは別として、性に多様性があるのは確かなこと」「今回の話の趣旨は、その多様性を認め、マイノリティへの差別や偏見をなくしてもらいたいという願いであること」等を補足しました。