24年も前のことですが、『アルマゲドン』というアメリカ映画がヒットしました。宇宙から飛来した小惑星が、地球に衝突することを想定したSF映画です。その直撃を受けたら、地球はバクテリアすら生き残れない「死の惑星」となってしまいます。
人類の存亡をかけアメリカ航空宇宙局(NASA)は、小惑星に穴を掘り内部で核爆弾を炸裂させ、軌道を変えるという作戦を立てます。その任務遂行の役割を担ったのは「穴掘りのスペシャリスト」である石油採掘作業員のチームでした。
時間の関係上、詳しいストーリーは省略しますが、最後は主人公のチームリーダーが我が身を犠牲に核爆弾を起動させ、人類は滅亡の危機を免れたのでした。映画のタイトルである『アルマゲドン』は「世界最終戦争」という意味です。
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ハリウッド映画でよく使われる「全米が泣いた」という宣伝文句は、この映画が広めたように記憶しています。もちろん私も、映画館で「泣いた」1人です。のみならずミーハーな私は、主人公の宇宙服についていたワッペンを買い求め、それを自分の上着に縫い付けて、悦に入ったものでした(写真)。
あれから約四半世紀、まさかその映画のタイトルを、あんな形で耳にするとは思っていませんでした。約1ヶ月前、ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ戦線で核兵器使用も辞さないことをほのめかしました。それを受けアメリカのバイデン大統領が、演説の中でこう言ったのです。
「アルマゲドンの危機が高まっている」
これまで人類は、第1次世界大戦と第2次世界大戦を経験しました。そして、今後もし第3次世界大戦が勃発すれば、核兵器が用いられるのは間違いありません。
では、ここで皆さんに質問です。その後さらに第4次世界大戦が起きたら、何を武器にした戦争になると思いますか? その理由とともに説明してください。
と、質問しておきながら、これも時間の関係で答えを言います。AI(人工知能)や宇宙衛星、無人兵器、ロボットなどを思い浮かべた人もいるかと思いますが、正解は「棒や石」です。
核兵器による第3次世界大戦が行われれば、人類は壊滅的な打撃を受けます。そして、地球は全ての文明が破壊し尽くされ、原始時代に逆戻りしたような状態になるでしょう。まさに「世界最終戦争」です。
したがって、仮に生き残った人類がさらに第4次世界大戦を起こしても、棒や石を武器にした原始時代のような戦いしかできないというのが、その理由です。
超大国の大統領が口にした「アルマゲドン」を聞き、私はタンスにしまってあった上着を取り出し、改めてワッペンを眺めました。そこには、映画で使用されたスペースシャトルの絵柄と名前に並んで、こう刺繍されています。
『 FOR ALL MANKIND 』
(フォア・オール・マンカインド=全人類のために)
ワッペンは同じでも映画のヒーローと違い、この私が「全人類のために」できることなど、塵のようなものです。ただし、たとえ塵に等しくても、ゼロではありません。なぜなら「全人類」も分解すれば、最後は一人ひとりの人間に行き着くからです。だとしたら、誰か一人ひとりの平和のためにできることは、この私にも皆さんにも、必ずあるはずです。
家族でも友達でも、まず身近な人の平和のためにできることを考え、実行してみませんか。ただ祈るだけで「世界平和」は実現しません。私たちには、超大国の大統領のような権力も権限もないのです。そんな私たちが「世界平和」を実現する唯一の方法は、家庭や学級、学年、学校、地域社会など「身近な世界の平和」を積み重ねることだと思います。
気の遠くなるような道のりかもしれませんが、【塵も積もれば山となる】という諺はけっして嘘ではないと、私は信じます。