おそらく皆さんのお父さん・お母さんはご存知かと思いまが、今から20年前、平均視聴率34・3%と大ヒットした、木村拓哉さん主演の『HERO』というTVドラマがありました。
木村さんが型破りでありながら正義感の強い検事を演じ、宇多田ヒカルさんの歌う主題歌『Can You Keep A Secret?』も、CD売り上げ150万枚を超えるミリオンセラーとなりました。
このドラマのキャッチコピー(宣伝文句)が、当時ある学校で副校長をしていた私の心を、文字どおりキャッチ(わしづかみ)しました。以来20年間にわたりそのコピーは、教員としての私の座右の銘(自分の心の中に留め置いて、自分を励ましたり戒めたりする言葉)になっています。
【群れない 媚びない 偉ぶらない】
これが、そのキャッチコピーです。
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まず【群れない】。意味もなくグループ・集団には属さないということです。次に【媚びない】。誰かに気に入られようとしたり、誰かのご機嫌を取ったりしないということです。そして、最後に【偉ぶらない】。自分を過信せず、誰に対しても謙虚さを失わないということです。
前者2つ【群れない】【媚びない】だけを切り取ると、どこか一匹狼のような感じがします。しかし、一匹狼と違うのは、最後に【偉ぶらない】があることです。それがあるからこそ、私は20年来座右の銘にしているとも言えます。
常に他者に学ぶ姿勢、感謝する姿勢があって初めて、誰かと群れることも誰かに媚びることもしない自分でいられる…。私はこのコピーを、そう解釈しています。
さて、新年度が始まり、約1カ月がたちました。引き続き感染症対策で不自由な思いをさせていますが、緊急事態宣言下でも「学び」を止めることなく学校生活を送れていることは、有り難く思います。
ただ、新しいクラスの中で、グループに入れない、自分はひとりぼっちといった焦りや不安を感じている人が、いるかもしれませんね。そんな人に言っておきます。どうか心配しないでください。今は無理に誰かと群れたり、誰かに媚びたりしなくても大丈夫です。
同じ「ひとり」という読み方でも「一人」と「独り」は、違います。熟語に「単独」と「孤独」があり、英語が「alone」と「lonely」を使い分けるのと同じです。「一人」は、単に人間の数が「1」であるというだけの話で、2や3でないことを恐れる必要はありません。
むしろ、真に恐れるべきは、無理にグループに属したり、人の顔色をうかがったりすることで、この世に「一人」しかいない自分を見失ってしまうことなのです。
あえて集団に身を置かず「一人・単独・alone」でいれば、周囲に流されることもありません。自分の強みや課題を客観的に見つめ、成長の糧とすることもできます。ただし、他者への敬意や感謝の念だけは、持ち続けていてください。
私は「独り」とは、他者との繋がりが一切ない状況を指すと思っています。他者への敬意や感謝をなくせば、それは独善(独り善がり)を生み出し、独善はしばしば他者との繋がりを断ってしまいます。そうなると、「一人」は「独り」に、「単独」は「孤独」に、「alone」は「lonely」になってしまうのです。
【群れない 媚びない 偉ぶらない】
「一人」でいる時、人は他者に流されず自分を見つめ、成長することができます。同時に、他者への敬意や感謝の気持ちを大切にしていれば、そんな自分と繋がる仲間が必ず現れます。
繰り返しますが、「一人」でいることはけっして悪いことではありません。一方で「一人でいるのも、悪くないよね」と話せる仲間がいることも、私はとても素敵なことだと思っています。