ひと月ほど前のことですが、始業式の日に新年や3学期の目標を立てている学年・クラスがありました。そして、多くの人がそこに「もっと勉強する」といったことを書いていて、感心しました。
ただ、水を差すつもりはありませんが、勉強が「嫌い」あるいは「あまり好きではない」という人に、それを本気で達成する意思はあるでしょうか。どんなに立派な目標も、実行が伴わなければ『絵に描いた餅』(実際には役に立たないもの)になってしまいます。
そうならないためにも、単に「もっと勉強する」という目標だけでなく「何のために勉強するのか?」という目的をはっきりさせておく必要があります。
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「何のために勉強するのか?」
この、もしかしたら皆さんにとって究極とも言える問いの答えは、人によって異なります。したがって、これから話すことはあくまで私の個人的見解です。さらに言えば、私の中にでさえもいくつかの解があり、その中の1つを話すに過ぎないということを、あらかじめ断っておきます。
『窓ぎわのトットちゃん』という本を知っているでしょうか。昨年、42年ぶりに続編が出版された大ベストセラーで、年末にはアニメ映画化もされたので、見た人もいるかもしれません。著者は、タレントの黒柳徹子さんです。
その黒柳さんが司会を務める『徹子の部屋』というTV番組があります。毎回さまざまな分野で活躍しているゲストを招き、黒柳さんが対談を進めるトーク番組です。
間もなく放映開始49年を迎える長寿番組で、出演したゲストも延べ1万2000人を超えています。そして、それら大勢のゲストについて黒柳さんは、ある書物で面白いことを言っていました。
実は、招いたゲストの中で子どもの頃からその道に進もうとしていた人は、ほとんどいなかったというのです。
子どもの頃の夢を実現したゲストは、わずかに約5%。残り95%のゲストは、はじめから現在の仕事が夢だったわけではなく、その時々にやらなければならないことをやっているうちに、少しずつ「なりたいもの」の輪郭が見えてきたのだそうです。
そう聞くと、中学生の皆さんに今「なりたいもの」がないからといって、焦る必要のないことが分かってもらえるかと思います。ただし、今「なりたいもの」がない中学生に、私は必ずこう言っています。
「それでも学校の勉強だけは、しっかりやっておきなさい」
さあ、なぜ私はそんなことを言うのでしょうか?
まず1つは、先の『徹子の部屋』のゲストと同じです。「なりたいもの」がないから、やるべき勉強しないというのは間違いです。
その時々でやるべき様々な分野(例えば、中学校であれば9教科)の勉強をすることで、「自分には何が向いていて、何が向いていないのか」が少しずつわかってくる、つまり「なりたいもの」の輪郭が見えてくるからです。
もう1つは、そのようにしていつか「なりたいもの」、言い方を変えれば「夢」を見つけたとき、自分がその夢に挑戦できるようにしておくためです。この先何年かたって皆さんが夢を見つけたとき、その夢を実現するためには、必ず何かしらの知識や技術、資格が必要となるでしょう。
ところが、若い頃、その時々でやるべき勉強をしっかりやっておかなかったばかりに、そうした知識や技術、資格を得る道に進めない、あるいは、うんと遠回りしなければならないというケースが、現実問題としてたくさんあるのです。
今「なりたいもの(夢)」の決まっている人が、その実現のために一生懸命勉強する…。それは素晴らしいことです。
その一方、まだ「なりたいもの(夢)」はないけれど、今やるべき勉強に一生懸命取り組む。そして、いつか人生のどこかで見つけるであろう「なりたいもの(夢)」への挑戦権を獲得しておく…。
これもまた、素晴らしい勉強の目的だと思います。