9年3組・道徳の時間の様子です。
「思いやり・感謝」をテーマに、教科書より『電車の中で』という読み物を使用しています。中学生の【タケシ】は、電車の中で高齢者に当たり前のように席を譲り感謝されていた女子を見かけます。
一方【タケシ】は、高齢者に席を譲ろうとしてかえって機嫌をそこねられたら面倒だからと、最初から空いている席に座ろうとしませんでした。そして、そうとも知らずに席に座った高齢者から感謝されるのでした。
そんな【タケシ】は、女子と同じように感謝されたにもかかわらず、なんとなくスッキリしません。授業では、スッキリしない【タケシ】の心情を想像するとともに、本当の思いやりについて考えました。
あえて私の考えは述べませんが、国語の教科書にも掲載されることの多い『夕焼け』(吉野 弘)という詩を下の『おりたたみ記事』に掲載します。参考までに読んで、さらに考えを深めてくれたら幸いです。
校長 武田幸雄
おりたたみ記事 ここをクリック
夕焼け 吉野 弘
いつものことだが
電車は満員だった。
そして
いつものことだが
若者と娘が腰をおろし
としよりが立っていた。
うつむいていた娘が立って
としよりに席をゆずった。
そそくさととしよりが坐った。
礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。
娘は坐った。
別のとしよりが娘の前に
横あいから押されてきた。
娘はうつむいた。
しかし
又立って
席を
そのとしよりにゆずった。
としよりは次の駅で礼を言って降りた。
娘は坐った。
二度あることは と言う通り
別のとしよりが娘の前に
押し出された。
可哀想に。
娘はうつむいて
そして今度は席を立たなかった。
次の駅も
次の駅も
下唇をギュッと噛んで
身体をこわばらせて・・・。
僕は電車を降りた。
固くなってうつむいて
娘はどこまで行ったろう。
やさしい心の持主は
いつでもどこでも
われにもあらず受難者となる。
何故って
やさしい心の持主は
他人のつらさを自分のつらさのように
感じるから。
やさしい心に責められながら
娘はどこまでゆけるだろう。
下唇を噛んで
つらい気持ちで
美しい夕焼けも見ないで。