卒業式 校長式辞
- 公開日
- 2025/03/26
- 更新日
- 2025/03/26
できごと
保護者の皆様、本日はお子様のご卒業、まことにおめでとうございます。
心も体も立派に成長されたお子様の姿に感慨もひとしおのことと存じます。心からお祝い申しあげます。
ご来賓の皆様、本日はご臨席を賜り、誠にありがとうございます。
子どもたちの晴れやかな門出を見守り、祝福いただきますことを、日頃のご支援と重ね合わせ、深く感謝申し上げます。
さて、卒業生は、昨年の4月始業式の後、体育館に集まって学年開きをしました。
担任のU先生、I先生は、皆さんに「当たり前のことを当たり前にできるようになって欲しい。」と訴えました。
皆さんにとっての当たり前は、日々の学習です。大人は仕事です。
今日は身近な大人の仕事ぶりについて話をします。
まず、Sさんです。
中根橋小の男性の主事さんです。
今年で77歳。 本校で働き始めて13年。
暑い日も寒い日も背筋をピンと伸ばして、「おはよう」の声をかけてくれます。
Sさんは中学校を卒業すると、15歳で自衛隊に入りました。
その頃は高校に進学する人は半数、あとは就職です。
自衛隊では主にミサイルの仕事についていました。
今では大きな災害があれば真っ先に駆けつけるのが自衛隊、なくてはならない存在です。
しかし、以前は自衛隊のイメージは良いものではありませんでした。
沖縄で制服姿で出勤していたSさんは、市民に心無い言葉をかけられました。
それほど沖縄の人たちにとって自衛隊は戦争の記憶と重なるものだったのです。
しかし、Sさんには日本を守っているという自負がありました。
54歳の定年まで任務を全うしました。
その後、私立の学校で用務員として10年間働きました。
そして、65歳で2度目の定年。その後、朝から昼まで中根橋小学校で働くことを決めました。
Sさんと言えばペンキ塗りです。皆さんが4年生の時、教室前の廊下が塗り直されました。
しかし、予算の関係ですべてはできませんでした。
そこで、残りをSさんが同じ色で塗り始めました。
素人なので、図書館で本を見たり、ペンキ屋さんにも聞いたりして勉強しました。
失敗の連続でしたが、コツコツやる、丁寧にやる、をモットーに今でもペンキの刷毛を握っています。
私は、働く訳を尋ねました。Sさんは言います。
健康だから働ける。
動かないと仕事にならない。
動くことで健康になる。
自分には年金があるのでお金のために働いているわけではない。
一緒に働いている人がいい人ばかりなので気持ちよく仕事ができる。
先生方もよく「ありがとう」と言ってくれることが嬉しいです。
「朝、玄関に立っていて挨拶をしない子がいます。挨拶をしないと将来、仕事で相手にはされません。」
との一言は、重みのある言葉でした。
2人目は、同じく男性主事のIさんです。
Iさんは76歳。
工業高校を卒業した後、出版社に就職し、大学の理工学部の2部、つまり夜間大学で学ぶことにしました。
大学を卒業し、コンピューターのシステム会社に入社をしました。
60歳の定年まで大型コンピューターを使っての業務運用システムの仕事に携わりました。
東京証券取引所の取引が終わって、 翌朝までに報告書を作成するための手順書のシステムを担当していました。
帰宅は毎日終電、朝7時には出社。平日は自宅で夕飯を食べることはなかったそうです。
Iさんは、朝7時から夜11時まで会社にいる、そんな生活を「1人セブンイレブン」と名付けていたそうです。
今では考えられない働き方です。
Iさんは12年前から昼から夕方まで本校で主事として働いています。
モットーは子供たちの安心・安全です。2つ目は学校をきれいにする。また汚れるのは分かっています。
しかし、今できる、一番きれいにしたいと言っていました。
Iさんは現役の少年野球のコーチです。
子供たちは無限の可能性を秘めていると言っています。
本校の印象を聞くと、
「子供たちはとても明るく、最近はすごくいいです。子供たちが素直です。」
と答えてくれました。
Iさんも体が動くうちは仕事をやりたい。
みんなと一緒に仕事をしていると楽しい。
そして、働くことは生きがいであり、誰かの役に立つことが嬉しいと話していました。
お二人にとって、働くことは当たり前です。
その当たり前を楽しんでいるようにも思えます。
皆さんにとっての当たり前は、日々の生活や勉強です。
気持ち一つ、工夫一つで、きっと楽しくなるはずです。
人間は幸せになるために生まれてきました。
幸せになるためには、人は学び、働くのです。
当たり前を積み重ねれば、道は必ず幸せになります。